実験用ネコの飼育室内で, ネコとともに飼育されていた生後4カ月の子イヌ1頭が, 1979年11月に突然嘔吐と血様下痢および著明な白血球減少をきたして.発症後3日の経過で死亡した.病理組織学的には, 小腸から大腸に及ぶ広範な粘膜上皮の壊死および剥離と出血が著しく, また骨髄の細胞数の激減と脾臓の炉胞の萎縮が顕著であった.いっぽう, 腎臓からウイルスが分離された.本ウイルスはネコ肺線維芽細胞に大型の核内封入体を形成し, DNA型で, 熱およびエーテルに耐性であり, 4℃ で豚赤血球を凝集した.電顕観察では直径約20nmの球形粒子であった.またネコ汎白血球減少症ウイルスとの間に血清中和試験で交差が認められた.以上の所見から本ウイルスはパルボウイルスと同定された.同室内で飼育されていた他のイヌおよびネコは, 本ウイルスに対し, いずれも高いHI抗体価を示した.健康なイヌおよびネコへの接種では, いずれも軽度の白血球減少のみが認められたに過ぎなかった.
抄録全体を表示