昭和55年, 埼玉県下において4頭のツベルクリン反応陽性淘汰牛について, 病理学的, 細菌学的検索を実施した. その結果, 全例に結核結節は認められず結核菌陰性のいわゆる無病巣反応牛であったが, 1頭の肺門リンパ節から
Mycobacterimn kansasiiが分離された. 本菌の牛からの分離はわが国初めてである. 本菌の性状は, 遅発育菌で光発色性, 亜テルル酸塩還元は陰性, カタラーゼ半定量は強陽性, 硝酸塩還元, ツイーン水解およびウレアーゼは陽性, ナイアシンは陰性等であった.
また, 本菌感作モルモットに対する哺乳型ツと鳥型ツの反応性を調べたところ, 鳥型ツにくらべて哺乳型ツに強い反応がえられた. さらに, 本菌と結核菌感作モルモットに対する哺乳型ツの反応は同程度で両菌間に交差反応が認められたことから, 本牛は
M.kansasiiの感染が無病巣反応牛の原因として考えられた. 菌分離陰性の3頭については, 本反応の原因は明らかではなかった.
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