1982年10月から11月にかけて, 佐賀県下の3頭の牛に嚥下障害を主徴とする疾病が発生し, 7日から10日の経過ですべて死亡した.主要な臨床症状は, 軽度の発熱, 流涎, 嚥下障害および嘔吐であった.剖検により, 舌下面の潰瘍, 食道粘膜筋層における白色斑の散発・第四胃粘膜の充血および潰瘍形成が認められ, 組織学的検査により, 食道および舌の筋線維の凝固壊死, 舌下面粘膜の壊死と潰瘍形成, 心筋線維の凝固壊死が認められた.ウイルス分離を発病牛と同居牛のそれぞれ1頭の血液について試みたが, すべて陰性であった.イバラキウイルスに対する中和抗体は, 発病牛すべてに, また同居牛6頭中5頭に検出された.
これらの成績から, 今回発生した牛の疾病は, イバラキ病であると考えられる.日本における本病の発生が1960年以来22年ぶりに認められた.
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