1982年1月, 名古屋市屠畜場において膿瘍を多発し, 各臓器から
Salmonella typhi-suisが分離された1屠殺豚に遭遇した. その成績は次のように要約される.
1) 雑種, 去勢, 約5ヵ月齢, 体重約60kgで削痩し, 栄養状態悪く, 発育不良であった.
2) 肺の左右前中葉, 腎臓および気管支, 下顎リンパ節に膿瘍を認めた. 肺は全体に水腫性で心臓および胸壁と癒着し, 肝臓と腎臓に混濁腫脹が見られ, また脾臓は腫大し, 濾胞不明瞭であった. リンパ節は全身性に腫大していた.
3) 組織学的には肺では気管支に化膿性カタール性炎が見られたほか, 肺胞内には剥離した肺胞上皮, 多形核白血球, リンパ球などに富む滲出液をいれ, その一部に大小の化膿巣が見られた. 肝臓と脾臓では, 網内系細胞の活性化が著明で, 肝臓には小壊死巣および単核性細胞, 巨核細胞などの巣状性またはビ漫性増殖が見られた. 腎臓では糸球体や間質に炎症性細胞浸潤が見られ, 膿瘍が散発していた. 脳には病巣は認められなかった.
4) 4ヵ所の膿瘍, 肺, 肝臓, 脾臓, および腎臓, ならびに腸間膜, 内側腸骨, 腸骨下, 膝窩, および浅鼠径リンパ節より, ほぼ純粋に
S.typhi-suisが分離された.
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