犬・猫の糞線虫症の疫学的研究の一環として, 1982年10月~1983年12月に, 神奈川県の犬420頭について, Strongyloides属糞線虫の検出を目的に糞便検査 (直接塗抹法, 飽和食塩液浮遊, 濾紙培養法) を行った.その結果, 調査した420頭のうち275頭 (65.5%) が寄生蠕虫陽性で, 検出された蠕虫は, Metagonimus属吸虫 (2頭, 0.5%), マンソン裂頭条虫 (2頭, 0.5%), 犬鞭虫 (132頭, 31.4%), 犬回虫 (86頭, 20.5%), 鉤虫 (160頭, 38.1%), およびStrongyloides属糞線虫 (5頭, 1.2%) であった. このStrongyloides属糞線虫の寄生が認められた5例について, それぞれ犬または猫に対して感染実験を実施し, それにより得た寄生世代雌虫をはじめ発育各期の虫体と虫卵の形態学的観察, ならびに新鮮糞便中への排出ステージなどの生態学的観察を行った結果, 4例は
Strongyloides planiceps, 1例は
S. stmomlisと同定した.したがって, 犬では実験用ビーグルのような特殊な例を除いて,
S. stmomlisよりもむしろ
S.planicepsの方が一般的であると考えられる.
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