住肉胞子虫シストの検出のため新簡易直接検査法を考案し, 従来との比較を行った. また, 本法を用いて昭和58年3月から5月までに埼玉県北部の3と畜場に搬入された健康牛から無作為的に抽出した204頭について, 住肉胞子虫シストの感染状況を明らかにし, さらに検出されたシストを用いて犬への実験感染を試み次の結果を得た.
1) 直接法と従来用いられているトリプシン消化法とを検出率の点で比較したところ, 両者間に有意差は認められなかった.
2) 病理組織標本による種の同定の結果, 検出されたシストはすべてシスト壁の薄い, Sarcocystis cruziのものであった. このシストの特徴は直接法により取り出した生鮮なシストにおいても認められた.
3) ウシの年齢別の住肉胞子虫の感染率および感染シスト数は宿主年齢の増加とともに増加する傾向が認められた.
4) シストの大きさとブラディゾイト数の関係ではシストの大きさに比例してブラディゾイト数が増加した.
5) 直接法によって取り出されたシストを用いて終宿主である犬への感染が成立し, スポロシストの排出が認められた.
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