ビタミンD
3 (V・D
3) 投与が分娩前後の乳牛のCa代謝に及ぼす影響を明らかにする目的で, 正常飼育下の3~8才のホルスタイン種の分娩牛10頭 (V・D
3投与群4頭, 対照群6頭) を用い, V・D
3投与牛には分娩前2~6日にV.D
31,000万IUを筋肉注射した. これらの供試牛について分娩前4日から分娩後4日までCaの出納試験を中心に行った結果, 次のような成績が得られた.
1) V・D
3投与群におけるみかけのCa吸収量は, 対照群のそれに比較して分娩当日および分娩後1-2日に有意に増加した.
2) V・D
3投与群のCa貯留量は, 対照群のそれに比較して分娩当日および分娩後1日に増加し, 分娩後1~4日に正の出納となった.
3) V・D
3投与群における平均乳中Ca分泌量は, 対照群のそれに比較して減少する傾向がみられた.
4) V・D
3投与群の血漿Ca濃度は, 対照群のそれに比較し有意の差は認められなかった.しかし, 分娩当日から2日までの減少程度は対照群のそれに比較して軽度であった.
5) V・D
3投与群の赤血球Ca濃度は, 対照群のそれに比較し, 分娩前後において増加する傾向を示した.
以上, 分娩前2~6日におけるV・D
31,000万単位の筋肉注射は, 泌乳開始後のCa貯留量に明瞭な増大をおこした. これはV・D
3のCa吸収量の増大と乳中Ca分泌量の減少が大きな要因と考えられ, 従来から使用されているV・D
3の乳熱に対する予防効果は, この体内貯留量の増加に起因したものと考えられた.
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