牛の四塩化炭素 (CCl
4) による急性肝障害の病態変化, およびそれに対するチオプロニソ製剤 (2-MPG) の治療的効果について検討した. 肝障害は, CCl
4投与後3-4日目に最も著しく発現し, 以後漸次回復に向い, 23~26日目には検索したいくつかの項目がほぼ投与前値に回復した.
血清酵素活性値では, いずれも著明な上昇を認めたが, GOT・γ-GT・MAOはCCl
4投与後23日目でもなお投与前値よりも高値を示した.血清脂質では, 遊離脂肪酸 (FFA)・中性脂肪 (TG) の上昇, リン脂質 (PL) の低下を認めたが, 肝内ではFFA量の軽度の, またTG量・コレステロール量の中等度の増加を認め, さらに, グリコーゲン (Gly) 量・Glucose-6-phosphatase活性値の低下, Hexokinase活性値の上昇を認めた. BSP試験は著しい陽性化を示し, 血清アルブミン (Al)・A/G比・血清尿素の値は低下した.
この人工肝障害牛に2-MPGを投与した牛群は, 検討したすべての項目が対照群よりも回復が早かったが, とくに肝内のTG・Gly量, BSP試験成績, 血清中のFFA・PL・TG・A1・A/G比・ビリルビン値およびGOT・γ-GT・OCT活性値は回復が著しく早かった.これらの成績は, 2-MPGが, SH基化合物として, SH基供給に基づいて各種の肝臓病, とくに肝細胞の脂肪化または脂肪肝に治療的および予防的効果の発揮することを示唆するものである.
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