日本獣医師会雑誌
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39 巻, 12 号
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  • 種村 高一, 大場 茂夫, 平井 定, 西山 篤, 津曲 茂久, 武石 昌敬
    1986 年 39 巻 12 号 p. 749-756
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    肝生検により肝実質に脂肪沈着を認めた63頭のホルスタイン搾乳牛に, チオプロニン (2-Mercaptopropionylglycine: MPG) を投与し治療効果を検討した. MPG投与群63頭中48頭 (76.1%) で乳量の回復, 臨床症状の改善などが認められた. また, この時点での肝生検の結果でも肝実質の脂肪滴は消失していた.
    同時に検査した血液生化学的所見では, 臨床症状の改善した牛群 (予後良群) において血清NEFA, GT, ALP, T-Bili (P<0.01), BUN (P<0.05) が低下し, 改善の認められなかった牛群 (予後不良群) ではGOT, GPT, γ-GTP (P<0.05) の上昇が認められた.
    これらのことから, 予後良群における肝機能の修復, 血液性状の回復, 脂肪沈着の減少はMPG剤によるものと考えられた. また, 投与後のGOT, ALP, T-Bili, ZTT, BUNが初診時に較べ高値となるものは予後不良であると推定された.
  • 久保 博文
    1986 年 39 巻 12 号 p. 757-761
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    17頭のホルスタイン種 (Hol) における自然発情, プロスタグランジンF アナログ (PGa) 投与による発情, 卵胞刺激ホルモン (FSH) 投与による過剰排卵処理時発情のそれぞれ63, 30, 4例, 11頭の黒毛和種 (JB) についても同様それぞれ55, 5, 23例について, その発情前後の基礎体温 (BBT) の変動を調査した.
    1) 自然発情周期におけるBBTは, 発情前に下降, 発情日に顕著な上昇, 翌日再下降の変化を示した.
    2) PGa投与で誘起された発情日のBBTの上昇は, 自然発情時よりも明瞭であった.
    3) FSHで処理した場合は, 発情前のBBT下降が不明瞭で, 発情翌日から低温が3日間続いた.
    4) HolとJBについて自然発情時の所見を比較したところ, JBのほうが発情日のBBT上昇が明瞭であった.
    5) 過剰排卵処理によく反応した5例では, FSH投与で上昇, PGa投与で下降, 発情日に上昇, 翌日再下降のBBT変化を示したが, 反応のよくなかった4例では, 過剰排卵処理とBBTの変化には関係が認められなかった.
    6) 受精卵移植によって妊娠した4頭では, 発情日に性周期中最高のBBT値を示したが, 妊娠しなかった7頭では, 発情日が最高BBT値ではなかった.
    7) 気温とBBTには関係が認められなかった.
  • 中西 章男, 江島 博康, 増永 朗, 黒川 和雄
    1986 年 39 巻 12 号 p. 762-766
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    実験的開胸手術犬に対し, 免疫賦活剤とされている市販のLcvamisole (LMS) およびKlestin (PSK) を用いて, 術後細胞性免疫能低下に対する防止効果について検討した.LMSは術後, 2.5mg/kg/dayを連日3日投与, 4日休薬のサイクルで, PSKは1g/head/dayを毎日, 約2週間にわたり経口投与した. 両群ともストレスの指標である血中11-OHCSは, 非投与の対照群と同様に, 手術後一過性の上昇を示した. また, リンパ球数・T-cell数は両群とも手術直後に軽度に減少し, 量的な抑制に対する効果は認められなかった. しかしながら, 質的な抑制については次のように有意な効果を認めた.
    すなわち, PHAに対するリンパ球幼若化反応は, 対照群では術後から有意に低下し, その回復に約4週間を要しているのに対して, LMS群では2週目以降の低下の防止が, また, PSK群ではほぼ全期間にわたり幼若化能の低下は軽減され, 3週目には回復の傾向を示した.以上のように, 両薬剤とも術後の細胞性免疫能, とくにリンパ球幼若化反応の低下に対して有効であるように考えられた.
  • 佐藤 れえ子, 岡田 幸助, 佐々木 重荘, 内藤 善久, 村上 大蔵
    1986 年 39 巻 12 号 p. 769-773
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1983年12月, 自動車修理工場の隣りで飼育されていた6匹のネコのうち3匹が突然死亡し, 残りの3匹のうち2匹がショック状態を呈し, 他の1匹のみが無症状で経過した事例に遭遇した. ショック状態にあった2例はまもなく死亡したが, 無症状であった1例を含めて3例とも高窒素血症を呈しており, そのうちの1例は低Ca血症を示していた. これらのことから不凍液誤飲によるエチレングリコール中毒をうたがい, 死亡した1例を解剖して病理学的検索を行ったところ, 腎臓の尿細管内に高度のシュウ酸カルシウムの結晶沈着と著二しい尿細管上皮細胞の空胞変性が観察され, エチレングリコールネフローシスと診断された.
  • 山下 秀之, 原 元宣, 野田 雅博, 千田 広文, 中西 英三
    1986 年 39 巻 12 号 p. 774-780
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1982年3月29日, 広島県比婆郡の肉用牛250頭を飼養する農家に北海道から乳用雄子牛を29頭導入したところ, 4月7日から発熱, 鼻漏, 発咳, 流涙, 下痢を主徴とする疾病が64頭に発生した. これら発病牛10頭の鼻汁10例を牛腎培養細胞に接種したところ, 2株の牛アデノウイルス3型 (BAdV-3) が分離された. 発病牛のペア血清についての各種ウイルスの抗体検査の結果, BAdV-3に対する有意な抗体上昇が9頭中6頭に認められた.
  • 横山 敦志
    1986 年 39 巻 12 号 p. 781-783
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    と畜検査にこおける豚赤痢の診断方法の検討とその浸潤状況について調べ, 下記の結果を得た.
    1) と畜検査で大腸炎の病変をもった豚14例について菌検索を行ったところ, 10例の結腸内容物と結腸粘膜から104-107個/ml, 盲腸・直腸からも103-106個/mlのTraponema hyodysenteriaeが分離された.
    2) 罹患豚の腸管内容の直接鏡検によるトレポネーマの検出率は, 明視野法に比べ暗視野法の方が高かった.
    3) 罹患豚の主要な肉眼所見は, 結腸粘膜における充血, びらん, 潰瘍, 偽膜形成であった.
    4) 同一豚舎から搬入された208頭のうち, 生体検査において外見上本病の症状を示していたものは全くなかったが, と畜解体後の豚赤痢様腸病変保有数は14頭であり, うち5例からT.hyodysenteriaeが分離された.
    5) 札幌食肉流通センターへ搬入された豚の地区別および豚舎別にT.hyodysenteriaeの汚染状況を調べたところ, 4支庁9地区11豚舎にわたっていた.
  • 安里 章, 瀬尾 昌克
    1986 年 39 巻 12 号 p. 784-788
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    北海道北見市の3戸の農場において, 敷ワラ, 乾草およびhouse dustについて真菌およびThermoactinomycetesの検索を行った.ロールベーラーで梱包された敷ワラと乾草から17属26種, 家庭内のhouse dustから13属25種の真菌を分離し, 3戸中1戸のhouse dustからはThermoactinomycetesに含まれるMicropolyspora rubro-rubescensを分離した.3戸から共通して分離された真菌は, 敷ワラと乾草ではAspergillus fumigatusであり, house dustではCryptococcus uniguttulatusDebaryomyceskanseniiであった.敷ワラ, 乾草およびhouse dustのそれぞれ1g中の総菌数は104以上であった.なお, 農場で発生した農夫肺症の患者および飼育牛について血清学的検査を行ったが, これら分離菌に対して高い抗体価を保有するものはなかった
  • 田中 博, 篠原 信之, 渡辺 清一, 菅野 紘行
    1986 年 39 巻 12 号 p. 791-795
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    松山市内におけるカンピロバクター腸炎の感染源を究明するため, 同地域の患者と関連が深いと思われる家畜や愛玩動物について, Campylobacterの保菌状況を調査した. そして, 下痢症患者から分離された菌株で作製した9種類のCampylobacter jejuniの免疫血清を用いて, 患者由来株と動物由来株を血清学的に比較した.
    Campylobacterは下痢症患者の21.5%から分離され, その大多数はC.jejuniであった. 動物においては, ウシ (11.5%), ブロイラー (45.0%), 採卵鶏 (18.6%), イヌ (3.9%), およびネコ (9.7%) からC.jejuniが分離された. しかし, ブタから分離された菌株はすべてCampylobactercoliであった.下痢症患者, 動物とも, C.jejuniは通年的に分離されたが, 下痢症患者とブロイラーでは春から夏にかけて増加する傾向が示された. ウシ, ニワトリ, イヌ, ネコから分離されたC, jejuniの血清型は患者由来株と共通したものが認められた. これらのうち, ブロイラーは, C.jejuniの保菌率が高いこと, 血清型のパターンおよび季節的分離状況が下痢症患者ど類似していることから, ヒトに対する感染源として最も重要と思われた.
  • 佐藤 良彦, 平澤 博一, 米沢 昌則
    1986 年 39 巻 12 号 p. 796-799
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    発熱と呼吸器症状を呈して死亡した4ヵ月齢のネコを検索し, トキソプラズマ病と診断した. 剖検で, 胸水, 肺水腫, 肝腫大, 腎臓の点状出血, リンパ節の腫大が認められた. 病理組織学的には, 肝臓とリンパ節に広範な壊死がみられ, 肺では肺胞上皮が著しく腫大していた. リンパ節, 脾臓, 肝臓, 肺の塗抹ギムザ染色標本で, 増殖型のトキソプラズマ原虫 (Toxoplasma gondii) が検出された.
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