歩行異常, 不安動作などの神経系疾患症状を示した11週齢の日本短角種子牛1頭の血清および脳脊髄液のMg, Ca, 無機リン (ip), Na, KおよびC1濃度を調べた.
血清のMgとCa濃度は, それぞれ, 0.34と7.0mg/100m
lであって, 低Ca血症を伴った顕著な低Mg血症を示した. NaとK濃度は正常値をやや下まわったが, C1とip濃度は正常値であった.
脳脊髄液 (Cerebrospinal fluid: CSF) のMg濃度 (2.1mg/100m
l) は正常範囲 (2.1~2.4mg/100m
l) 内にあり, 血清/CSF濃度比 (S/CSF) は0.16と正常範囲 (0.79~1.29) に比べ著しく低く, MgのCSF濃度は血清濃度 (低Mg血症) を反映しなかった. いっぽう, CSFのCa濃度 (4.1mg/100m
l) は正常値 (5.1~6.3mg/100m
l) よりかなり低かったが, S/CSFは1.7と正常範囲 (1.49~2.12) 内にあったことから, CaのCSF濃度は血清濃度を反映して低下したと考えられた. CSFのKとCl濃度は正常値を示し, NaとiP濃度は正常値よりやや高かったが, S/CSFはいずれも著変はみられなかった.
本症は, 体重 (56kg), 低血清蛋白質 (5.7mg/100m
l), 低血清NaとK濃度などから, 栄養欠陥性のMg欠乏と考えられ, 神経系疾患症状は低Mg血症とCSFのCa濃度の低下に由来するものと思われる.
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