1987年7月から8月にかけて, 肉用牛400頭規模の肥育農場で, 導入直後の牛約30頭に呼吸器症状と発熱を主徴とする疾病が発生し, 3頭が死亡, 4頭が廃用となった.
死亡牛1頭, 発症牛10頭について病性鑑定の結果, 病理学的検査では著明な線維素性肺炎像がみられ, 肺の酵素抗体法 (ABC法) で
Pasteurella haemolytica抗原が特異的に検出された. 細菌学的検査では, 死亡牛の肺, 気管等から純培養状に, また発症牛鼻腔ぬぐい液10例中7例から優勢に
P. haemolyticaが分離され, いずれも生物型A, 血清型1に属した.
P. haemolyticcaに対する抗体検査では, 死亡牛, 発症牛とも高い抗体価を保有していた.
以上の諸成績から, 本症例は
P. haemolytica感染症と診断された.
本症発生の要因としてに, 導入に伴った種々のストレスにより抗病性が低下し, 本菌の増殖をゆるし, さらに不適切な飼養管理が病勢を増悪させ, 集団的発生にいたったものと考えられた.
この農場に対し, 発生要因をもとにストレスの除去, 衛生管理, 病原体対策を指導した結果, 以後の発生は認められなかった.
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