乳牛の血液の保存条件とプロジェステロン (P) 濃度の関係を明らかにする目的で, 血液の血漿分離までの保存温度と時間, および血液に窒化ナトリウム (NaN
3) を添加した場合のP濃度に対する影響を検討した
妊娠中期のホルスタイン種経産牛9頭から採取した血液を, 採取後0.5時間から48時間まで4℃ および20℃ に保存した後, 血漿を分離した.血漿中のP濃度の測定は, 市販のEIAキットを用いて行なった.血漿中のP濃度は, 採血後0.5時間に7.6±3.2 (Mean±SD) ng/mlであったが, 採血後2時間には, 4℃ 保存で6.1±2.4ng/ml, 20℃ 保存で5.6±2.4ng/mlに低下した. その後4℃ では48時間まで著変はみられなかったが, 20℃ で6時間に4.0±1.9ng/ml, 24時間には2.1±1.4ng/mlの値に急激に低下した.NaN3 (5mg/ml) を添加した血液の血漿中P濃度は, 採血後0.5時間には5.6±2.1ng/mlと, 無添加血液のそれに比べて低い値で, 4℃ 保存では採血後48時間までほとんど変化がみられなかったが, 20℃ 保存では4時間以降に約4.5ng/mlの値に低下した.
以上のことから, 血漿中のP測定を目的として採取した血液は, ただちに氷冷し, 短時間内に血漿分離を行なう必要があると考えられた. NaN
3添加の臨床応用については, 今後さらに検討する必要があると考えられた.
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