日本獣医師会雑誌
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43 巻, 6 号
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  • 田口 雅持, 加藤 昌克, 木村 正徳, 石川 守, 平井 孝
    1990 年 43 巻 6 号 p. 413-416
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    北海道網走支庁管内のホルスタイン種の牛370頭を飼養する大規模酪農専業農場で, 1986年12月-1987年7月に牛ウイルス性下痢・粘膜病 (BVD・MD) ウイルスの感染による先天異常の集団発生があった.異常はこの間に分娩した102頭のうち25頭 (24.5%) に認められ, その内容は流産5頭, 脳奇形牛16頭, 持続感染牛4頭であった.疫学調査によりウイルスの流行時期は1986年10月下旬と推定され, 流行時期の推定胎齢と先天異常の間には興味深い関係が認められた.すなわち, 流産と持続感染牛は推定胎齢90日以下の牛にのみ発生し, 脳奇形牛は90日齢以下2頭, 90-150日齢14頭と90日齢以上の牛に多く認められ, 推定胎齢150日以上の牛に異常は認あられなかった.
    以上のことから, BVD・MDウイルスが非免疫牛の占める割合が多い大規模農場でひとたび流行すると先天異常が多発し, さらにその内容は感染時の胎齢に依存することが明かとなった.
  • 金子 周義, 鍋谷 政広, 荻野 博明, 中林 大, 渡辺 大成, 星 邦夫, 村山 仁一, 富所 寿男, 西片 良樹, 石川 正男, 岩田 ...
    1990 年 43 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1988年3月から5月にかけて新潟県内の一地域において, 17頭の乳用牛にChlamydia psittaci (Cp) 感染による流産を主徴とする異常産が発生した.流産は主に妊娠中・後期に起こった
    流産胎子には肉眼的に全身性の浮腫および皮下の膠様浸潤, 肝臓および全身リンパ節の腫大がみられた.病理組織学的には肝臓の多発性巣状壊死およびリンパ組織の壊死巣が高率に認められ, 肝臓では病巣に一致してCp特異抗原が確認された.これら流産胎子10例を検索したところ, 全例からCpが分離された.さらに流産後の母牛にはCpに対する抗体の有意な上昇が認められた
    また, 抗体検査および糞便からのCp分離試験の結果, 流産発生の有無にかかわらず, その地域はCpによって広く汚染されていることが確認された.しかし, その汚染経路は不明であった
    本症例は, わが国では初めて確認されたクラミジア性流産と思われる.
  • 江崎 安一, 白井 弥
    1990 年 43 巻 6 号 p. 423-431
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    通年舎飼の環境にある生年月日の明らかな18ヵ月齢以上の, 雌ホルスタイン種561頭と黒毛和種154頭の永久前歯の萌出, 歯冠の磨滅 (咬合面象牙質の出現歯冠隣接面の咬耕の発現山形の歯列の形成) と歯根露出の状態を観察し, 次のとおりの年齢判定上の資料を求めることができた.これらは飼養およびその環境と密接な関係のあることが示唆された。なお, ホルスタイン種と黒毛和種の間に大きな相違はみられなかった。
    23±2ヵ月齢: 第一永久切歯萌出.
    30±2カ月齢: 第二永久切歯萌出.
    36±3カ月齢: 第三永久切歯萌出.
    44±4ヵ月齢: 永久犬歯萌出.
    4歳: 第一, 第二永久切歯咬合面に象牙質が出現している。
    5歳: 第三永久切歯咬合面に象牙質が出現し, 永久犬歯の切縁はわずかに磨滅している.
    6歳: 永久犬歯咬合面に象牙質が出現し, 咬耗が認められる.
    7歳: 咬耗と山形の歯列が認められ, 第一永久切歯の歯根が露出しているものがある.
    8歳: 第一, 第二永久切歯の歳根が露出し咬耗と山形の歯列が認められる.
    9歳: 第三永久切歯の歯根が露出し, 咬耗と山形の歯列が認められる.
    10歳: 全歯の歯根が露出し, 咬耗と山形の歯列が認められる.
    11歳: 全歯の歯根が露出し, 歯冠は短かく歯間に隙間が生じ, 咬耗と山形の歯列が認められる.
    12歳以上: 全歯の歯根が顕著に露出し, 歯冠は短小で歯間に隙間があり, まれに咬耗, 山形の歯列, コップ状歯冠, 透明象牙質, 歯冠喪失などが認められる.正確な判定は困難である.
  • 豊満 義邦, 長谷 学, 溝下 和則, 北野 良夫, 福山 孝人
    1990 年 43 巻 6 号 p. 432-435
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1987年9月鹿児島県の其養豚農家で, 子豚が生後8日までに6頭急死する事例が発生した.検査した子豚3頭の臨床・病理・細菌学的所見では特記すべきものは得られず, 有意菌も分離されなかった.しかし, ウイルス学的検査では2頭の各実質臓器でESK細胞に細胞変性効果を示すウイルスが分離された.このウイルスは理化学的, 生物学的および血清学的性状からトガウイルス科のアルファウイルスに属するゲタウイルスと同定した.
    なお, 急死直前の子豚, 同腹豚, 母豚からの分離ウイルスに対する中和抗体価は全て<2であったことから, この疾病は分娩後, ゲタケウルスに感染したものと推測された.
  • 平安名 盛己, 慶留間 智厚
    1990 年 43 巻 6 号 p. 436-440
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    沖縄県の黒島において, クマホス50%水和剤の750倍液およびBPMC20%乳剤の200倍液のいずれを用いても, オウシマダニBoophilus microplus駆除の困難な牧場が多数確認された.
    7カ所の牧場由来未吸血幼ダニを用い, ノックダウン法でクマホス, BPMC, プロポクスルおよびフルメトリンに対する感受性を検討した.その結果, クマホス, BPMCおよびプロボクスルの感作において, ほとんどの幼ダニの50%仰転に要する時間 (KT50) は, 対照として用いた標準株のそれより延長していた.しかし, フルメトリンにおけるKT50は標準株のそれより短縮していた.この成績をもとに, ピレスロイド系殺ダニ剤を黒島で使用した結果, 著明なダニ駆除効果が認められた.
    以上のことから, 黒島には有機燐系およびカーバメイト系殺ダニ剤に抵抗性であるオウシマダニBoophilus mlcroplus が出現したと推測された.
  • 白金電極利用時の電極の大きさと電位
    佐藤 敬, 久保田 泰一郎
    1990 年 43 巻 6 号 p. 443-446
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    直径0.5mmで長さ1.5mm, 25mm, 25mm3本, 25mm4本の4種の白金針をそれぞれ陽電極, および陰電極として20mmの間隔をおき家兎の耳翼に刺入埋没し, 直流20μAの定電流を通じた.その結果, 陰陽電極間の電位は通電後上昇し, 1.5mm電極では24時間後に2.65Vへ, 25mm電極は72時間後に2.23Vへ, 25mm3本の電極では72時間後に1.93Vへ, 25mm4本の電極では72時間後に1.80Vとなって極値となり, 電極が大きい程低い電位が示された
    陽電極と基点間の電位と陰電極と基点間の電位の配分比は電極が大きい程大きく, 値は1.5mmでは2.1: 1, 25mmでは2.2: 1, 25mm3本では2.5: 1, 25mm4本では2.9: 1を示した.このことから陽性の配分比の少ない (陽性荷電率が少ない) 程, 陽電極周囲のイオン濃度の増大を意味し, 陽電極周囲組織への影響が大きいことを示唆している.
  • 町田 登, 山我 義則, 籠田 勝基
    1990 年 43 巻 6 号 p. 447-450
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    犬の洞性徐脈の3症例について, 稟告ならびに臨床症状からその発生原因を比較検討した.これらの3例はそれぞれ頑固な発咳 (症例1), 突然の元気・食欲消失および嘔吐 (症例2), 持続性の下痢および多飲多尿(症例3)を主訴に来院したものであるが, 全例に共通した所見として洞性徐脈, 沈鬱および無気力・無表情が認められた.臨床症状, 心電図検査あるいは詳細な問診の結果から症例1では発咳による, 症例2および3では心因性疾患による迷走神経緊張亢進が洞性徐脈の原因としてあげられた.いずれの症例においてもアトロピン投与あるいは飼育環境の工夫, 改善などにより当初の症状が比較的速やかに消失し, 心拍数は正常に復帰した.
  • 納 敏, 瀬尾 洋行, 一条 茂, 稲田 一郎, 江口 暢, 更科 孝夫
    1990 年 43 巻 6 号 p. 453-458
    発行日: 1990/06/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    潜在性乳房炎牛141頭に対してビタミン (Vit.) ADEならびにA剤を1回および4日間隔で2回経口投与し, 投与後の乳汁中体細胞数の変動を検討した.Vit.A, E併用群の血中トコフェロール値は1回投与例, 2回投与例ともに投与後1日目に有意に増加し, 乳汁中においても有意な増加が認められた.血清Vit.A (レチノール, レチニルパルミテート) 値も, vitA, E併用群とvit.A投与群が投与後1日目に有意に増加し, 乳汁中vit.A値も同様の変動を示した.乳汁中体細胞数は1回投与例ではVit.A, E併用群のうち血清トコフェロールの正常値例 (250μg/100ml以上) のみが減少を示し, 2回投与例ではVit.A, E併用群が2回投与後1日目より有意に減少したが, vit.Aおよびプラセボ群では減少が見られなかった.また, Vit.A, E2回投与例のうち体細胞数300万/ml以下の分房では50万/ml以下への減少が認められたが, 300万/ml以上の分房では正常値までの減少が見られなかった.
    以上の成績から, Vit.A, Eの併用投与によって乳汁中体細胞数の減少効果が認められ, とくにVit.Eの投与がより重要であると判断された.
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