日本獣医師会雑誌
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43 巻, 9 号
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  • 平原 正, 安原 寿雄, 出水田 昭弘, 吉木 研一, 詫間 博, 大田 外之, 首藤 敏之, 岡部 達二, 山中 盛正, 児玉 和夫, 中 ...
    1990 年 43 巻 9 号 p. 639-645
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    一貫経営養豚場における肥育豚に関する疾病の動向を調べた結果, 次のことが明らかにされた. A, B両養豚場とも哺乳豚に圧死が多く, 1ヵ月齢までの発死率は7.9%および4.0%であった. しかし, 2ヵ月齢以後の艶死率は2.3%および1.8%と著しく低率であった. 臨床症状の発現率をみると1ヵ月齢の子豚では2養豚場とも下痢症状が多く, 9.5%および15.1%に達し, その病原体としてロタウイルスや大腸菌が疑われたが特定はできなかった. 2ヵ月齢以後では発咳, 鼻汁漏出, アイパッチおよび元気・食欲の減退等の臨床症状が急増し, 剖検所見では胸膜肺炎とマイコプラズマ性肺炎が多く認められた. 2養豚場における発病豚の呼吸器や鼻汁からの病原ウイルスの検索では, 豚エンテロ, 豚パルポ, 豚血球凝集性脳脊髄炎 (PHE) および豚レオの各ウイルスが分離された. いっぽう, 病原細菌の検索ではBordetella bronchiseptica, Actinomyces pyogenes, Pasteurella multocida, Actinobachillus pleuropneumoniae およびMycoplasma spp. 等が分離された.
    各種病原による抗体調査では2養豚場ともインフルエンザA豚型, 豚アデノ, PHE, 豚レオ1型, 豚ロタの各ウイルスならびに.A.pleuropneumoniae2型・5型およびB.bronchisepticaの各抗体価のヒ昇を認めた.
    以上の成績から, 一貫経営養豚場に多発する下痢症や呼吸器病には数種のウイルスと細菌が複合的に関与している実態を明らかにした. しかし, 一貫経営養豚場では導入肥育豚群に比較して2ヵ月齢以後の死亡率が極めて低いことから, 養豚業における一貫経営方式の有利性が示唆された.
  • 出水田 昭弘, 安原 寿雄, 久保田 道雄, 吉木 研一, 平原 正, 児玉 和夫, 佐々木 文存
    1990 年 43 巻 9 号 p. 646-649
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1979年から1984年の間に日本各地域より集められた340例の越夏豚の血清を用いて, Getah, JE (Japanese encephalitis), Apoi, Akabane, Batai, IbarakiおよびBEF (Bovineephemeral fever) の7種類のウイルスに対する抗体保有状況を調べた.
    その結果, 抗体陽性率はJEに対して全国平均で70%と最も高く, いずれの地域からも陽性例が検出された. Getahに対しては全国平均で46.2%で北海道以外の地域で検出され, 近畿, 中四国で高い陽性率を示した. Apoiに対しても反応陽性例がみられたが, JEとの類属反応によるものと考えられた. またBatai, Akabane, Ibarakiに対しては低率であったが抗体が検出され, BEFに対しては全例とも陰性であった.
  • 岡田 啓司, 佐藤 繁, 鈴木 利行, 金田 義宏
    1990 年 43 巻 9 号 p. 650-654
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    脱脂乳中のプロジェステロン (P) 測定を野外の臨床繁殖試験および検査に応用する目的で, 乳汁の採取条件とP濃度の関係をEIAにより検討した.
    同一個体の4分房それぞれの脱脂乳中のP濃度はいずれの採取時期においても差異がみられ, その幅は0.4ng/mlから1.7ng/ml, 平均0.9ng/mlであった. 乳汁の採取時期ごとのP濃度は, 血漿中P濃度が高い群 (5ng/ml以上) では混合乳に比べ朝の前搾り乳は有意に低い値を示したが, 血漿中P濃度が5hg/ml未満の群では朝の前搾り乳, 混合乳および後搾り乳間に有意の差は認められなかった. 朝の搾乳後2, 4および6時間目に採取した乳汁の脱脂乳中P濃度は, 朝の混合乳と比べ搾乳後4および6時間には有意に低い値を示し, 特にP濃度の高い例において著明な低下が認められた. 脱脂乳中のP濃度は血漿中のそれと比べ, いずれの採取時期においても有意に低い値を示したが, 搾乳後6時間を除いて両者の問に有意の正の相関が認められた. なおP濃度と乳成分との間に一定の関係はみられなかった.
    以上のことから, 脱脂乳中のP測定を目的とした乳汁の採取は, その方法および時期を一定にすることが必要で, 混合乳を用いることが適当であると考えられた.
  • 宇野 健治, 武居 和樹, 中西 幸司, 中川 享子, 村上 賢司, 本間 惣太
    1990 年 43 巻 9 号 p. 655-660
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1987年7月から11月にかけて滋賀県内において免疫不全が疑われる子牛5例 (17-160日齢) に遭遇した. 臨床的にはこれらの子牛は出生時から虚弱であったり, 下痢や肺炎を繰り返す慢性の感染症を伴っていた.病理学的には胸腺の高度萎縮が全例に認められ, 末梢リンパ性器官においても萎縮性変化がみられた. さらに, 各症例の主要病変として4例に種々のタイプの気管支肺炎がみられ, 1例に化膿性髄膜炎が認められた. 細菌学的には肺病変部からPasteurella multocida, Actinomyces様菌, Bacillus subtilisが有意菌として分離された. さらに, 化膿性髄膜炎例からグラム陰性桿菌, 肉芽腫性肺炎例から免疫組織化学的Aspergilus抗原を認めた. 分離菌の多くは比較的病原性の弱いものであった. このことから, このような感染を引き起こした要因の一つとして, 胸腺ならびに末梢リンパ性器官の萎縮性変化による二次性の免疫不全が示唆された. 検索例の胸腺は皮質と髄質の区分が可能であり, ハッサル小体の存在と小葉間結合組織の増加により先天性の低形成とは異なるものであった. しかし胸腺の萎縮を引き起こした一次的な原因については, さらに詳細な検討が必要と考えられた.
  • 伊藤 裕和, 岡田 正二, 小林 章二, 杉山 弘行, 夏目 昌知
    1990 年 43 巻 9 号 p. 661-665
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1979年から1988年の10年の間に本家畜保健衛生所において127群 (906羽) のニホンウズラを病性鑑定した18群 (57羽) に大腸菌症が見られた. 大腸菌症は1月から5月にかけて14群と多発化の傾向が見られ, 21日齢から330日齢の様々な日齢で発生が見られた. 剖検では肝の腫大, 包膜の混濁・肥厚, 心における心膜の肥厚などが見られ, 病理組織学的検査では肝細胞の壊死, 心の線維素性外膜炎などが見られた. 細菌学的検査では肝, 心などから大腸菌のみが分離された. 薬剤感受性試験では, 18群の本症例由来大腸菌18株はCER, GM, CP, NA, OAに高感受性を, PC, OTC, SDMに耐性を示した.
  • 久米 正彦
    1990 年 43 巻 9 号 p. 666-669
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    初生羊に対するカテーテル栄養法におけるカテーテル挿入長を判定する指標を得るため, 生後3日以内に死亡したが主要臓器や体重比に異常が認められなかったコリデール種の初生羊35頭 (雄16頭, 雌19頭) を実験に供した. カテーテル挿入長は食道長 (鼻端から噴門まで) とし, 体長 (肩端から坐骨端まで) との関係を調べた.
    カテーテル挿入長と体長の個体による変動は10%以下で, 個体差は大きなものでないと推察された. また, カテーテル挿入長と体長の変動幅がほぼ同じ程度であることから, 体長がカテーテル挿入長の指標として妥当であると推察された. 雄雌をプールして回帰分析した結果, 挿入長=0.85×体長+49cm, γ=0924, s.e.±0.17が得られた. この回帰式の変動係数は7%で, 寄与率は0.86であった.
    体長に対するカテーテル挿入長の比率は, 平均で1.01±0.03となったので, カテーテル挿入長はほぼ体長と同じ長さを目安にすればよいと考えられる. 初生羊のカテーテル挿入長算定は, 正確には回帰式を用い, 野外あるいは緊急の場合には体長を挿入長と考えればよい.
  • 下田 哲也, 野呂 浩介
    1990 年 43 巻 9 号 p. 673-676
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    猫白血病ウイルス (FeLV) 感染に伴う臨床徴候を認めた猫134例について検討した.
    性別では91例 (68%) が雄であった. 発症年齢は87例 (65%) が4歳以下の若い猫で, 特に2歳の猫での発症が多く32例 (24%) であった. このことからFeLV感染症は若い雄猫に多発する傾向があると考えられた.
    疾患別では腫瘍性疾患はわずかに22例 (16%) であり, 112例 (84%) は非腫瘍性疾患に分類された. さらに非腫瘍性疾患の多くはウイルスの直接作用によるものではなく, FeLVの感染による免疫機能の低下に伴うものであった.
    予後は疾患によってかなり差がみられたが, 全体として診断から1年後に51%が死亡しており, 死亡例の約半数は診断から1ヵ月以内に死亡していた.
  • 川嶋 和晴, 菅谷 通晃, 勝部 泰次, 丸山 総一, 田村 和満
    1990 年 43 巻 9 号 p. 679-681
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1983年と1984年の夏季に, 神奈川県下の猫194頭を対象としてサルモネラ保菌調査を行った結果, 11頭 (5.7%) の腸間膜リンパ節ならびに回盲結腸口前後の粘膜に, または何れか一方にサルモネラ保菌を認めた.さらに検出された7血清型のうち, とくにS.cholerasuis subsp.choleraesuis seroyar typhimuriumの検出率が高かった.
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