一貫経営養豚場における肥育豚に関する疾病の動向を調べた結果, 次のことが明らかにされた. A, B両養豚場とも哺乳豚に圧死が多く, 1ヵ月齢までの発死率は7.9%および4.0%であった. しかし, 2ヵ月齢以後の艶死率は2.3%および1.8%と著しく低率であった. 臨床症状の発現率をみると1ヵ月齢の子豚では2養豚場とも下痢症状が多く, 9.5%および15.1%に達し, その病原体としてロタウイルスや大腸菌が疑われたが特定はできなかった. 2ヵ月齢以後では発咳, 鼻汁漏出, アイパッチおよび元気・食欲の減退等の臨床症状が急増し, 剖検所見では胸膜肺炎とマイコプラズマ性肺炎が多く認められた. 2養豚場における発病豚の呼吸器や鼻汁からの病原ウイルスの検索では, 豚エンテロ, 豚パルポ, 豚血球凝集性脳脊髄炎 (PHE) および豚レオの各ウイルスが分離された. いっぽう, 病原細菌の検索では
Bordetella bronchiseptica, Actinomyces pyogenes, Pasteurella multocida, Actinobachillus pleuropneumoniae および
Mycoplasma spp. 等が分離された.
各種病原による抗体調査では2養豚場ともインフルエンザA豚型, 豚アデノ, PHE, 豚レオ1型, 豚ロタの各ウイルスならびに.
A.pleuropneumoniae2型・5型および
B.bronchisepticaの各抗体価のヒ昇を認めた.
以上の成績から, 一貫経営養豚場に多発する下痢症や呼吸器病には数種のウイルスと細菌が複合的に関与している実態を明らかにした. しかし, 一貫経営養豚場では導入肥育豚群に比較して2ヵ月齢以後の死亡率が極めて低いことから, 養豚業における一貫経営方式の有利性が示唆された.
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