牛におけるセルロースアセテート膜 (セパラックスを使用) 電気泳動による血清蛋白分画泳動像を把握するため, 33戸371頭についてβ およびγグロブリン分画 (γ 分画) の量と易動度に注目して群, 型別の分類を実施した結果, 4群14型に分類された.
これらの牛を健康牛, 肝蛭濃厚感染地域牛, 疾病多発農家牛に区別し各群および各型の出現率を検討した結果, 健康牛ではγ分画の中央にピークがあり, このピークがあまり高くないI群のAからD型が多く出現していた.肝蛭濃厚感染地域牛ではγ分画の前半部 (陽極側) にピークのあるII群のG, HおよびI型が多く出現していた. しかし, 肝蛭濃厚感染地域牛でも肝蛭駆虫薬を定期的に投与しているN農家ではGおよびH型の出現率は低かった. 疾病多発農家牛ではI群でγ分画のピークが高いE, F型, およびγ分画の後半部にピークのあるIII群のL型が多く出現していた.
II群のGおよびH型の出現率が高かった牛群では, 他の牛群と比較して, 肝蛭成虫を抗原とした寒天ゲル内沈降反応による沈降抗体陽性率および抗体価が高い傾向が認められた. また, 肝蛭自然感染牛の同一牛19頭について年間の推移を調査した成績では沈降抗体陽性率や抗体価が高く, 肝蛭の感染が考えられた11月から3月にかけてGおよびH型の出現率が高かった.これらのことから, GおよびH型の出現は肝蛭濃厚感染, 特に幼若肝蛭の感染と関係があることが推察された.
いっぽう, これらGおよびH型も含めγ分画の前半部にピークが認められ, γ1分画が観察される泳動像では, 泳動したセルロースアセテート膜の観察で, γ 分画の前半部 (陽極側) にγ1分画に対応して単一のバンドが認められた.
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