日本獣医師会雑誌
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53 巻, 5 号
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  • 村上 洋介
    2000 年53 巻5 号 p. 257-277
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    口蹄疫はピコルナウイルス科アフトウイルス属に分類される口蹄疫ウイルスの感染による急性熱性伝染病で, 伝染力が強く, 牛, 水牛, 豚, めん羊, 山羊などの家畜をはじめ, 野生動物を含むほとんどの偶蹄類動物が感染する. 病名は発病動物の口, 蹄および乳房周辺の皮膚や粘膜に水疱が形成されることに由来する.
    口蹄疫による致死率は, 幼畜では高率で時に50%を越えることがあるが, 成畜では一般に低く数%程度である. しかし, ウイルスの伝染力が通常のウイルスに類を見ないほど激しく, 加えて発病後に生じる発育障害, 運動障害および泌乳障害などによって家畜は産業動物としての価値を失うために, 直接的な経済被害はきわめて大きいものとなる. さらに1度発生すると, 国あるいは地域ごとに厳しい生畜と畜産物の移動制限が課せられるため, 畜産物の国際流通にも影響が大きく, 間接的に生じる社会経済的な被害は甚大なものとなる. このため, 国際獣疫事務局 (OIE) は, 本病を最も重要な家畜の伝染病 (リストA疾病) に位置付けている [41, 87]. わが国でも本病は家畜の法定伝染病に指定され, その防疫は「海外悪性伝染病防疫要領」(農林水産省畜産局長通達, 昭和50年9月16日付, 一部改正昭和51年7月5日) に基づいて実施することになっている.
    口蹄疫ウイルスには, 相互にワクチンがまったく効かないO, A, C, Asial, SAT1, SAT2およびSAT3の7種類のタイプ (血清型) がある. さらに同一タイプ内にも, 部分的にしかワクチン効果が期待できない, 従来はサブタイプ (亜型) と呼ばれていた多数の免疫型が存在する. しかも, ウイルス抗原は変異を起こしやすく, ワクチンのみでは本病の根絶は困難である. さらに, 反甥獣が免疫を獲得した後長期間持続感染するキャリア化する問題もあって, 現在ほとんどの先進国は, 本病に対して移動制限と殺処分方式により防疫を図り常在化を防ぐことを防疫の基本方針にしている.
    本病の発生に関する記載は古く, すでに16世紀半ばにはイタリアでの発生が報告されている. その後, 原因がウイルスであることが判明した19世紀末までに, ヨーロッパ, アジア, アフリカおよ南北アメリカなど, ほぼ世界的な発生がみられている. 現在もヨーロッパの一部で散発的な, また南アメリカ, アジァおよびアフリカ諸国の広範な地域で常在的な発生がある. これまでに長年発生のない国は, 日本, 韓国, オーストラリア, ニュージーランド, アメリカ, カナダ, スウェーデン, ノルウェーおよびフィンランドのほか数力国程度である. 後述するように, 台湾では過去70年間近く発生がなかったが, 1997年に大規模な発生があった. 初発例から4カ月の問の累積発生農場数は6, 147農場で, そのうち発症頭数と蔓延防止のために殺処分された頭数はそれぞれ1, 011, 674頭および3, 850, 746頭にのぼり, 記録的な大規模な流行になった. 一方, 日本では今世紀初頭に発生があったが, 島国という地理的な条件に恵まれて, 幸いにその後約1世紀近くの問は発生を経験していない. しかしながら, 近年近隣国に発生が続き, 畜産物輸入量も年々増加していることから, わが国でも口蹄疫など海外伝染病の発生動向に無関心ではいられない情勢にある.
    口蹄疫ウイルスは, 動物ウイルスの中でも最も深く研究が進められたウイルスのひとつである. 口蹄疫ウイルスの分子生物学的解説は他の総説に譲ることとし [100], 本総説では, 口蹄疫ウイルスの生物学的性状に重点を置き, 口蹄疫の病性, 診断, 防疫についての現状を概説する.
  • 又吉 正直, 大城 守, 安富祖 誠, 国場 保
    2000 年53 巻5 号 p. 279-284
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1994~1997年に沖縄県内で分離された子牛由来Vero毒素産生性大腸菌 (verotoxin-producing Escherichia coli: VTEC) 35株について, 血清型, 毒素産生性, 病原遺伝子, 薬剤感受性およびプラスミドプロファイルによる解析を行った. 血清型はO群型ではO111が8株, O26が4株, O157が2株, O113, O119, O124が各1株, Rough型6株, 型別不能12株であった. 逆受身ラテックス凝集反応法とPCR法によるVero毒素型別では, VT1産生菌が26株, VT2産生菌が8株, VT1とVT2産生菌が1株であった. また16株が病原遺伝子eaeAを, 17株がhlyAを保有していたが, bfpおよびaggRは全例陰性であった. 薬剤感受性では7剤多剤耐性株をはじめ, 23株 (65.7%) が供試10薬剤のいずれかに耐性であった. 分離株のすべては1~6種類のプラスミドを保有し, O157: H7株では90kbの病原性プラスミドおよび分子量の小さいプラスミドが確認された.
  • 生田 健太郎, 小鴨 睦, 篠倉 和己, 函城 悦司
    2000 年53 巻5 号 p. 285-288
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    乾式血液自動分析装置 (ドライケム) を用いて17頭の乳牛から同時に採取した血液と乳汁の尿素態窒素 (BUN, MUN) を測定したところ, 高い相関が認められた (r=0.982, P<0.01). ドライケム測定値と, 吸光度法, 差動pH法および赤外線法との測定値の問には高い相関が認められた (r=0.891-0.941, P<0.01) が, 試験紙法との間には有意な相関は認められなかった. 乳汁を室温で保存した場合, 24時間後のMUN濃度は有意に低下した (P<0.05). 右前分房では搾乳の前後でMUN濃度に有意差が認められた (P<0.01). MUNは, 飼料摂取後3~5時間で最高値に達したのち低下した.
  • 生田 健太郎, 小鴨 睦, 篠倉 和己, 函城 悦司
    2000 年53 巻5 号 p. 289-292
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    泌乳牛32頭を供試し, 飼料給与状況と乳中尿素態窒素 (MUN) および乳蛋白質率との関係を月1回調査し, 適正給与状態にある個体のMUNと乳蛋白質率から栄養診断のための指標値を設定した. MUNは給与飼料乾物中の粗蛋白質 (CP) 含量および可消化養分 (TDN) 含量とは有意な正の相関, TDN充足率とTDN/CP比とは有意な負の相関を示した. 一方, 乳蛋白質率は, これらの項目との間にMUNとは逆の相関が認められた. MUNと乳蛋白質率は飼料給与状況と密接に関連しており, 栄養診断に利用できると判断された. その指標値は, 泌乳前期 (分娩後100日以下) ではMUNが8.6~19.2mg/dl, 乳蛋白質率が2.80~3.31%, 中期 (101~200日) ではそれぞれ8.6~16.7mg/dl, 3.09~3.53%, 後期 (201日以上) では6.1~12.5mg/dl, 3.35~3.91%となった.
  • 片山 雅一, 池田 章夫, 斉加 啓三, 石坂 真由美, 小野寺 道寛, 伊藤 健
    2000 年53 巻5 号 p. 293-296
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    泡沫性流涎および神経症状を呈した千葉県内一農場の18カ月齢雌和牛1頭について病原ならびに病理組織学的検索を実施した. その結果, 剖検では脳の充血, 肺胸膜の癒着を伴った肺の赤色肝変化が認められ, 病理組織学的には脳の囲管性細胞浸潤, グリア細胞の増殖および神経食現象と線維素性胸膜肺炎が認められた. また, 免疫組織化学的検査によって脳の神経細胞に日本脳炎ウイルス (JEV) 抗原が検出された. さらに, 脳からはJEVが, 肺からはPasteurella haemolyticaがそれぞれ分離された. 同居和牛4頭中2頭にJEV-HI抗体価の有意な上昇が認められた. 以上の成績から本例はP. haemolyticaによる線維素性胸膜炎を伴った牛の日本脳炎と診断された.
  • 石井 三都夫, 金森 隆, 遠藤 正司, 鶴岡 勇, 野沢 利範, 福田 雄, 山本 康了, 実川 豪志, 島村 努, 内海 晶彦, 松井 ...
    2000 年53 巻5 号 p. 297-301
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    乳牛の子宮捻転において, 患牛の後肢を吊り上げて, 降ろすことにより容易に捻転を整復することができた. 捻転方向を上にして牛を寝かせ, 両後肢の球節の直上をロープで結束し, トラクターで後躯を約1m吊り上げた後に, 術者は産道より胎子を把握しながら静かに降ろすことにより捻転を整復できた. 全例とも無麻酔下で行った. 3年間, 35例の子宮捻転に対して本法を試み, 29例は本法のみで整復でき, 23例の胎子が生きて生まれた. 28例は左方捻転, 7例は右方捻転であった. 母体回転法を併用したのは6例で, そのうち5例の胎子が死亡していた. 捻転整復後, 分娩まで24時間以上経過した4例の胎子はすべて死亡していた. 整復中および整復直後, 全例の母牛に異常は認められなかった. 本法は短時間かつ少人数で実施可能であり, 体力も必要としないことから, 臨床的応用価値が高いと思われた.
  • 渡邊 洋一郎, 牧内 浩幸, 今藤 豊重, 山崎 嘉都夫, 鬼塚 剛, 大橋 誠一
    2000 年53 巻5 号 p. 302-306
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1997年8~10月に鹿児島県内で流涎と嚥下障害を主徴とする54例のイバラキ病が発生し, かつ同時期にほぼ同じ地域で牛の流死産も多発した. 流死産の発生は, 妊娠170~280日齢のホルスタイン種に多く認められた. ほとんどの流死産母牛はイバラキウイルス (IBAV) に対して高い中和抗体価を示し, 流死産胎子の血清中にもIBAVに対する中和抗体が検出された. さらに, 11例の流死産胎子の血液, 脳, 脊髄などの臓器から21株のIBAVが分離された. IBAV遺伝子の第3分節を標的としたRT-PCRによって, 分離ウイルスからIBAV No.2株と同一サイズの増幅産物が得られたが, 制限酵素Sau3Alによる切断パターンはIBAV No.2株とは異なっていた. これらの結果から, 今回の流死産はIBAVの感染によって引き起こされたと考えられた.
  • 内田 明彦, 内田 紀久枝, 村田 義彦
    2000 年53 巻5 号 p. 307-310
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    蛋白質, ブドウ糖, 脂肪, ドッグフードをそれぞれ単独に飼料として給与したビーグル犬48頭 (体重8.0~12.4kg, 29~30カ月齢) にマンソン裂頭条虫Spirometra erinaceieuropaeiのプレロセルコイドを1頭当たり3匹ずつ経口投与した. 感染後5, 10, 15, 20, 25および30日に虫体を回収して, 宿主の摂取飼料の違いによる虫体の発育を調べた・その結果, ドッグフード給与犬ではすべての被検虫体の体長は感染の経過に伴い成長していたが, 蛋白質, ブドウ糖, 脂肪を給与した犬の場合は感染後10日まではほとんどの虫体が摂取飼料の影響を受けずに発育したが, それ以降はブドウ糖給与犬の虫体のみが, ドッグフード給与犬とほぼ同じように発育した. 片節形成は, 感染初期でドッグフード給与犬の虫体と比較して単独飼料給与犬からの虫体は少なかったものの, 感染後20日以降になるとブドウ糖給与犬からの虫体はドッグフード給与犬からの虫体とほぼ同様の数となったのに対して, 蛋白質あるいは脂肪給与犬では少なかった.
  • 北川 均, 溝口 仁美, 鬼頭 克也, 桑原 康人, 大場 恵典, 志水 泰武, 大塚 喜彦, 佐々木 栄英
    2000 年53 巻5 号 p. 311-314
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    肥満犬45頭において血漿レプチン濃度の臨床的意義を検討した. 肥満犬の血漿レプチン濃度は, 対照犬28頭よりも有意に高値であり, 体重, 胸囲, 腹囲, 体重/体長, 胸囲/体長, 腹囲/体長, 胸囲/腹囲, 白血球数, 血漿総蛋白濃度, 血漿アルブミン濃度, 血漿総コレステロール濃度, 血漿トリグリセリド濃度および血漿インスリン濃度と有意に相関した. 血漿レプチン濃度は犬においても肥満および栄養状態を反映する指標となりうる.
  • 斎藤 哲郎, 池田 文雄, 山口 裕之, 吉田 邦恵, 頓宮 廉正
    2000 年53 巻5 号 p. 315-316
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    飼い猫に糞便検査を実施したところ, 吸虫卵を検出した.プラジカンテル (praziquantel) 30mg/kgの皮下注射を行い駆虫を試みたところ, 吸虫の成虫が排泄された. この吸虫は形態学的検査の結果Spelotrema capellaeと同定された.
  • 検出状況と解剖学的分類
    中島 弘美, 笠井 潔, 門田 耕一, 石野 清之
    2000 年53 巻5 号 p. 319-323
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1976年4月~1996年3月の20年間に茨城県県西および県南食肉衛生検査所管内のと畜場で検査された14, 167, 540頭の豚のうち, リンパ腫と診断された86例について検索した. 86例のリンパ腫は, と殺頭数10万頭当たり0.6例と他の報告と比較すると低い検出頻度であった. 豚のリンパ腫は病勢の進行した段階で発見され, 全身に腫瘍病変を持つ場合が多い. そのため, これまでの解剖学的分類では, 病勢の進んだ胸腺型や消化器型が多中心型に入れられる傾向にあった. 全身に腫瘍病変を持つ胸腺型や消化器型を明確に分ける目的で, これまでの検査結果に基づき新たに全身型, 腹部型, 縦隔型, 体表型の4タイプに分類したところ, 86例のうち全身型が43例, 腹部型が32例, 縦隔型が9例, 体表型が2例であった.
  • 組織学的特徴と分類
    中島 弘美, 笠井 潔, 門田 耕一, 石野 清之
    2000 年53 巻5 号 p. 324-327
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    茨城県下のと畜場で集めた86例の豚のリンパ腫を組織学的に人のKiel分類に準じて分類を試みた. 胚中心細胞性または胚中心芽球性リンパ腫が62例認められ, 豚のリンパ腫の中ではB細胞性が最も多いと考えられた. 腫瘍細胞が濾胞性増殖を示すことは, 豚ではまれだと考えられていたが, 腹部型の32例中9例に観察され, 濾胞性リンパ腫は腹部型ではそれほど珍しくはないことが明らかになった. そのほかのタイプとしては, 頻度の高い順にリンパ芽球性, 免疫芽球性, リンパ形質細胞性, リンパ球性, 未分類型であった.
  • 酵素組織化学的および免疫組織化学的検討
    中島 弘美, 笠井 潔, 門田 耕一, 石野 清之
    2000 年53 巻5 号 p. 328-334
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    茨城県のと畜場で見いだされた86例のリンパ腫のうち, 19例を免疫学的, 酵素組織化学的, 免疫組織化学的に調べた. 腫瘍細胞の由来を決める際に, 酵素組織化学が役に立った例は少なかった. 10例の胚中心由来のリンパ腫では, 腫瘍細胞が免疫グロブリンを有しており, B細胞性であった. 同様に, 免疫芽球性リンパ腫の2例においても免疫グロブリンが認められた. しかし, 1例の免疫芽球性リンパ腫はT免疫芽球からなり, めん羊赤血球とロゼットを形成し, CD2陽性であった. 同様の結果を示したリンパ芽球性リンパ腫もT細胞性に分類され, non-T, non-B細胞性とした残り3例のリンパ芽球性リンパ腫には, T細胞のマーカーもB細胞のマーカーも検出されなかった. 1例のTリンパ芽球性リンパ腫はCD4とCD8の両方を発現しており, この腫瘍は胸腺にある両分子陽性 (ダブルポジティブ) 細胞由来と考えられた.
  • 清野 光一
    2000 年53 巻5 号 p. 344
    発行日: 2000/05/20
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
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