乳牛の臨床上健康な乳房68例および臨床型乳房炎罹患乳房101例の乳汁から, 黄色ブドウ球菌 (
S.aureus) およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS) の分離を行った. さらに, 分離した各ブドウ球菌の腸管毒素 (SEs: SEA, SEB, SEC, SEDおよびSEE) と毒素性ショック症候群毒素-1 (TSST-1) の産生能を測定した. その結果, (1) 健康牛乳汁からも慢性乳房炎牛乳汁と大差のない高頻度で
S.aureusとCNSが分離されること, (2) 分離した
S.aureusとCNSはいずれも高率にSEsとTSST-1を産生すること, (3) 乳汁中に検出される毒素性物質である, ブドウ球菌の産生する腸管毒素の中で, SECが重度な乳房炎症状を示す乳房で高率かつ高濃度に産生されていることが判明した. 以上の成績から, 乳牛におけるブドウ球菌性乳房炎は, 潜在性乳房炎から臨床型乳房炎へ移行する例が多いが, これには感染ブドウ球菌の産生するSECが深く関与している可能性が示唆された.
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