食欲の減退, 軽度の後肢蹌踉を主訴として来院した10歳, 雄のシェルティに顕著な赤血球増加症, エリスロポエチンの著増, 血清蛋白濃度の上昇, 高カルシウム血症がみられた. 血清蛋白の電気泳動ではγ分画にモノクローナルガンモパシーが認められ, 免疫電気泳動でM蛋白成分がIgAであることが確認された. X線所見では棘突起および頸椎椎体に骨融解像が認められ, 多発性骨髄腫と診断した. 瀉血, 輸液, プレドニゾロンの投与により, 血清蛋白濃度, カルシウム濃度は低下し, 赤血球増加症も改善したが, 56病日に四肢麻痺, 呼吸困難となり発死した. 赤血球増加症を伴う多発性骨髄腫はきわめてまれであり, 本症例の多血症はエリスロポエチンの増加によるものと考えられた.
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