日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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63 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
日本産業動物獣医学会誌
  • 村田 大紀, 井出 哲也, 矢吹 映, 三好 宣彰, 畠添 孝, 藤木 誠, 三角 一浩
    原稿種別: 短報
    2010 年 63 巻 12 号 p. 931-934
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    右側の上眼瞼と下眼瞼が癒着し,その間隙から排液が続いていた馬の症例が搬入された. 超音波検査により,右側眼球の変形と萎縮,さらに硝子体内部の不均一な高エコー源性を示す充実性組織が確認された. 眼瞼と角膜との間に生じた癒着組織の生検により,扁平上皮癌と診断した. 全身麻酔下にて,眼瞼からのアプローチによる眼球と腫瘍組織の摘出手術を行った. 腫瘍組織は,下眼瞼から眼窩辺縁の骨と強固に癒着していたが,上眼瞼および眼底方向の骨との癒着は比較的少なかった. 摘出された眼球の正常構造は欠失しており,腫瘍組織は眼球内部にも充満していた. 摘出した腫瘍組織の病理組織学的検査から,眼瞼結膜を原発とする扁平上皮癌と確定診断された.
  • 油井 武, 谷村 信彦, 芝原 友幸, 高木 嘉彦, 竹屋 元裕, 渡辺 喜正, 久保 正法
    原稿種別: 短報
    2010 年 63 巻 12 号 p. 935-938
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    動物園で飼育されていた10歳,雄,コサンケイ(Lophura edwardsi)が死亡した. 剖検時,回腸下部から大腸上部に乳白色卵円形腫瘤(4.5×4×4cm)が認められた. 腫瘍組織はおもに腸管粘膜固有層にみられ,多量の粘液中に弧在性または集塊状に認められた. これらは薄い結合組織により取り囲まれ,蜂窩状の粘液結節を形成していた. この粘液はアルシアンブルー染色(pH1.0,pH2.5),トルイジンブルー染色,過ヨウ素酸シッフ(PAS)反応およびムチカルミン染色陽性であり,上皮性の酸性粘液と考えられた. 免疫組織化学的に腫瘍細胞は上皮の特性を示し,トリ白血病ウイルス抗原陰性であった. 粘液中に浮遊した腫瘍細胞塊の細胞間にはデスモゾームがみられた. 以上から,本例は鳥類で初めて報告される腸管原発の粘液性腺癌の症例と考えられた.
日本小動物獣医学会誌
  • 中本 裕也, 長谷川 大輔, 酒井 洋樹, 小澤 剛, 植村 隆司, 長谷 生子, 松永 悟, 中市 統三
    原稿種別: 短報
    2010 年 63 巻 12 号 p. 941-944
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    3歳齢の雌のミニチュア・ダックスフンドが突然の四肢の起立困難を主訴に来院した. 神経学的検査では,四肢における姿勢反応および脊髄反射の異常が認められた. MRI検査では,C4-5背側領域にT2強画像で低信号,T1強調画像で等信号,造影剤によってリング状に増強される腫瘤性病変が認められた. また,腫瘤性病変は皮膚の陥入部と交通していた. 腫瘤性病変は外科的に摘出され,病理組織学的検査によって類皮腫洞と診断された. 以上のことから,本症例はⅣ型類皮腫洞と診断された. ミニチュア・ダックスフンドにおける類皮腫洞の報告は認められないため,本症例はミニチュア・ダックスフンドにおける初めてのⅣ型類皮腫洞の症例報告である.
  • 嘉手苅 将, 鈴木 哲也, 宇根 有美
    原稿種別: 短報
    2010 年 63 巻 12 号 p. 945-949
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    フトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps)3匹に胃カルチノイドを認めた. 症例はすべて成体の雌で,いずれも肉眼的に胃に大型・貫壁性の腫瘍が観察され,症例3は肝転移を伴っていた. 組織学的に,腫瘍組織は被膜を持たず胞巣状~リボン状構造を作って浸潤性に増殖しており,症例2に偽花冠状配列もみられた. これらの腫瘍細胞は接着性に乏しく,狭小な細胞質と小型,濃染性,類円形の核をもつ細胞や,大型・明調でやや紡錘形の核を有する細胞が認められた. 免疫染色で,全例の腫瘍細胞にクロモグラニンAとシナプトフィジンの存在が証明され,症例1のみサイトケラチンの発現がみられた. さらに,電子顕微鏡学的に,症例3の腫瘍細胞細胞質内に平均直径220nmの神経内分泌顆粒を観察した.
  • 田中 誠悟, 秋吉 秀保, 中込 拓郎, 青木 美香, 白石 佳子, 桑村 充, 山手 丈至, 大橋 文人
    原稿種別: 短報
    2010 年 63 巻 12 号 p. 950-953
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    9歳齢の雌のポメラニアンが,約1年前からの発咳を主訴に近医を受診した. 近医での加療中に状態の悪化を認めたため,精査・治療を希望し大阪府立大学獣医臨床センターに来院した. 初診時,重度呼吸困難を呈し,興奮時のチアノーゼを認めた. 呼吸音は後葉周辺部のみで聴診され,亢進が認められた. 一般身体検査およびX線検査では肺気腫を疑った. CT検査では,胸腔内の大部分を占める囊胞性病変と,一部に正常な肺の存在を確認したため,外科的切除を考慮し試験的開胸術を実施した. 開胸下にて切除可能部位を切除後,残存した囊胞に対して縫縮術を施した. 切除組織は病理組織学的に気管支囊胞と診断された. 術後8日目には呼吸状態もやや改善し,歩行可能となるなど,良好に回復した.
日本獣医公衆衛生学会誌
  • 佐藤 至, 津田 修治
    原稿種別: 原著
    2010 年 63 巻 12 号 p. 955-989
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2016/09/07
    ジャーナル フリー
    平成18年から21年に岩手県内で捕獲されたツキノワグマ計101頭について,肝臓および腎臓のヒ素,カドミウム,クロム,水銀および鉛をICP-MSによって定量した.ヒ素およびクロムの濃度はすべての個体で0.2および1.0mg/kg未満であった. カドミウムの平均濃度は肝臓で0.9mg/kg,腎臓で15mg/kgで,腎臓においておよそ15倍の濃縮が認められた. 水銀は肝臓,腎臓ともに大部分の個体で0.2mg/kg 未満であったが,1.0mg/kgを超える個体が1頭みられた. 鉛の平均濃度は肝臓,腎臓ともに0.37mg/kg であり,2頭の肝臓の鉛濃度が2mg/kgを超えていた. 今回の結果は前報と同様にツキノワグマにおける鉛汚染を示唆するものであったが,今回新たにカドミウムと鉛の濃度が北上高地個体群より北奥羽個体群で高いことが明らかとなった.
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