福井県内の酪農家において,1頭のホルスタイン牛が胎齢158日齢で流産した.流産胎子は雄で,体長は40cm,体重は3.0kg であり,臍帯で胎盤と繋がっていた.剖検所見では,広範な膠様萎縮が胎子の皮下結合織と胎膜で認められた.また,血様の腹水,胸水及び心囊水の貯留が認められた.病理組織学的検査では,胎盤に多数の好中球とマクロファージの浸潤を伴う炎症反応が認められた.また,胎盤と肺を含む胎子の多臓器にグラム陽性球菌が多数認められた.細菌学的検査では,これらの臓器からレンサ球菌が分離され,16S rRNA遺伝子の配列解析により,
Streptococcus(
S.)
pluranimalium と判定された.他の流産起因微生物が検出されなかったことからも,本症例は
S. pluranimaliumが関与していることが示唆された.この報告は,牛の流産胎子から
S. pluranimaliumが分離された国内で初めての報告である.
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