日本獣医師会雑誌
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66 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 小比類巻 正幸, 向井 真知子, 大塚 浩通, 三浦 弘, 川村 清市
    原稿種別: 原著
    2013 年 66 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    繁殖供用時期に明瞭な発情兆候が観察されなかったホルスタイン種経産牛に対し,液状キトサン製剤200mg/50mlを子宮内に注入した後にCIDR-synch変法で定時人工授精を行った群(キトサンCIDR群,n=106)と無注入で定時人工授精を行った群(CIDR群,n=101)の受胎率を比較した.キトサンCIDR群の受胎率は59.4%であり,対照群の44.6%と比べて有意に高かった(P<0.05).以上のことから無発情のホルスタイン経産牛に対する発情・排卵同期化の前の液状キトサン製剤の子宮内注入は,受胎率の向上に有効であることが示唆された.
  • 村田 涼子, 富岡 美千子, 渡辺 大作, Boonsriroj Hassadin, 小嶋 大亮, 畑井 仁, 朴 天鎬
    原稿種別: 原著
    2013 年 66 巻 6 号 p. 390-397
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    2011年6~11月にかけて,同じ農場の若齢ザーネン種山羊4頭が運動失調を呈した.剖検時,4頭中4頭の両後肢筋肉の萎縮,4頭中1頭の小脳の著明な萎縮が認められた.病理組織学的検索では,4頭の赤核,前庭神経核及び脊髄の腹角神経細胞に主座する中心性色質融解が観察された.小脳では,顆粒細胞層と分子層が萎縮し,プルキンエ細胞は消失していた.また,視床では肥大型アストログリアの増生が観察された.脊髄腹根神経線維と坐骨神経では泡沫状マクロファージの浸潤を伴う軸索変性が顕著であった.両側大腿部の骨格筋では筋線維の群萎縮が観察された.免疫組織化学的検索では,大脳白質,視床及び小脳白質におけるvimentin及びGFAP陽性のアストログリアのび漫性増生が観察された.4頭中3頭の血清銅濃度は著しく低下していた.以上の所見より,これらの症例を銅欠乏に起因する遅延型地方病性運動失調症と診断した.
  • 大谷 研文, 入部 忠, 村田 風夕子, 梁瀬 徹, 白藤 浩明, 山川 睦
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 6 号 p. 398-402
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    アカバネ病の診断では,体形異常を示す子牛や神経症状を示す牛からのウイルス分離,ウイルス遺伝子及び抗原の検出が困難なことが多い.2011年9月から2012年1月に山口県において本病が10例発生し,これら野外材料を用いてリアルタイムRT-PCR(rRT-PCR)の有用性を検討した.その結果,神経症状発症牛や死産胎子の脳幹部,脊髄及び小脳からアカバネウイルス(AKAV)遺伝子を検出することが可能であった.AKAV遺伝子検出結果と病理検査結果を比較したところ,遺伝子量と非化膿性脳脊髄炎の程度及び免疫組織化学的染色の強度,非化膿性脳脊髄炎の程度と免疫組織化学的染色の強度間に正の相関がみられた.中枢神経系を材料としたrRT-PCRは,従来の検査法より感度が高く,より的確なアカバネ病の診断に有用であることが示唆された.
小動物臨床関連部門
  • 矢野 淳, 黒髪 恵, 日高 崇博, 森中 恵子, 本徳 勇気, 皿田 洋子, 田村 隆一, 林 幹男
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 6 号 p. 403-410
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    小動物獣医療技術の発展によって,不治の病の治療が可能となってきた.不治の病の治療のための高度な獣医療の施術を希望する飼い主が存在する一方,臨床の場でその数はそれほど多いと感じられない.そこで不治の病の治療に対する飼い主の希望の実態仮説を確立するため,飼い主に質問紙調査を実施し,KJ法を用い量的・質的に解析した.その結果,飼い主は必ずしも「最新の獣医学知見に基づいた治療」を期待しているわけではなく,「獣医師の人間性等の資質」と「治療プロセスの適切な説明」を期待していた.また,動物の苦痛を取り除く治療を一番に希望し,不治の病の治療自体への葛藤を抱えていた.理論的飽和には追試が必要だが,人間心理が関係する獣医療問題の意味を明らかにし創造的解決に導く質的研究法としてのKJ法の可能性を,本研究は示唆した.
  • 奥田 真未, 渡邊 一弘, 高橋 邦昭, 辻 英里子, 高木 充, 酒井 洋樹, 山添 和明
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 6 号 p. 411-414
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    ゴールデン・レトリーバー(1歳3カ月齢,避妊雌)の右鼻梁部と右上顎犬歯部歯肉及び歯槽粘膜に2カ月前より腫脹を認めたため,穿刺・排液,抗生物質投与が行われた.腫脹は減少していたが10日前にふたたび腫脹し,岐阜大学動物病院に来院した.初診時,腫脹部粘膜に羊皮紙様感を触知し,X線,CT検査で境界明瞭な多胞状の骨透過像を認めた.腫脹部の一部の組織生検では重層扁平上皮がみられ,歯原性囊胞と仮診断し,摘出手術を行った.手術は腫脹部粘膜を切開し,剝離後,歯槽骨を除去して囊胞壁を露出し,これを摘出した.囊胞内に歯質は含まれず,周囲の歯に動揺や大きな変位がなかったため,抜歯は行わなかった.摘出病変は錯角化した重層扁平上皮がみられ,歯原性角化囊胞と確定診断した.歯原性角化囊胞は囊胞内に歯質を含まないため早期診断により歯を温存した摘出が可能である.
獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 久米 明徳, 清水 俊夫, 坂東 英明, 石田 真理子, 魚住 佳世, 篠原 敬
    原稿種別: 短報
    2013 年 66 巻 6 号 p. 415-417
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,徳島県動物愛護管理センターに収容された484頭の犬におけるBrucella canis感染状況をマイクロプレート凝集反応を用いて血清学的に検討した.検査した犬の2.5%(12/484)がB. canis抗体陽性であった.野犬,飼育犬並びに繁殖用犬の抗体陽性率は,それぞれ2.6%(8/310),2.3%(3/133),2.4%(1/41)であった.また,医療・獣医療・行政が連携してB. canis抗体陽性を示した1頭のチワワ,元飼養者及び同居犬2頭についてB. canis抗体調査を行うなどB. canis感染予防対策を行った.
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