日本獣医師会雑誌
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67 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 山根 逸郞, 石関 紗代子, 山崎 尚則
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    国内の一貫経営の養豚農場(n=68)の繁殖に関わるデータを用いて,2010~2012年の繁殖成績の推移と繁殖指標間の関連を調べた.2012年の繁殖成績が優良な農場(上位25%農場)は,年間離乳子豚数/母豚,離乳子豚数/腹,生存産子数/腹が期間内に増加したが,2012年の繁殖成績が中位以下の農場では変動がなかった.すべての農場で生存産子数/腹と哺乳中死亡率の有意な相関が認められ,高い産子数を達成するも,哺乳期の死亡で多くの子豚を失っている実態が明らかになった.繁殖成績が優良である農場で繁殖成績を向上させるためには,生存産子数の増加と哺乳中死亡率を抑えた離乳子豚数/腹の増加が重要であった.一方,繁殖成績が劣っている農場で繁殖成績を向上させるには,分娩腹数の増加と離乳子豚数/腹の双方の数値の改善で達成が可能となる.
  • 宮越 大輔, 池田 寛樹, 前田 昌也, 柴田 良, 敷地 光盛, 伊藤 克己, 園田 要, 南保 泰雄
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    馬の臨床繁殖現場において経直腸超音波検査による卵胞直径及び子宮浮腫のグレード(グレード0~5)を交配タイミング決定の指針とし,交配6~24時間前にhCG製剤(3000IU)を投与した場合の排卵成績を調査した.調査対象馬はすべて少なくとも直径35mm以上の卵胞を一つ以上有し,子宮浮腫のグレードは1以上であった.調査頭数147頭中137頭(93.2%)でhCG製剤投与後48時間以内に排卵が確認された.卵胞直径の上昇及び子宮浮腫のグレード上昇に伴い排卵率の上昇が認められた.卵胞の直径が45mm以上でかつ子宮浮腫のグレードが4以上の34例ではhCG製剤投与後48時間以内に34例(100%)で排卵が確認された.本調査の結果,経直腸超音波検査により卵胞の直径,子宮の浮腫のグレードを把握し,hCG製剤を排卵促進剤として用いることは繁殖雌馬の交配管理において有用であることが示唆された.
  • 石山 大, 佐藤 弘泰, 井上 宣子, 小川 明宏, 松本 敦子, 清水 秀茂
    原稿種別: 短報
    2014 年 67 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    2011年6月,1酪農家において難治性乳房炎が連続して発生し,千葉県で初となる牛マイコプラズマ性乳房炎と確認した.発症牛からはMycoplasma bovisが分離され,呼吸器症状(4/5),乳房の浮腫感(4/5),複数分房の罹患(5/5)を認めた.さらに乳汁の一般細菌検査では菌分離陰性(4/4)という特徴があった.搾乳牛全頭のマイコプラズマ検査を行った結果,12%(6/50)の保菌率であった.保菌牛を隔離し,抗生物質による治療を行い,うち2頭を淘汰したところ,2011年12月以降のバルク乳のモニタリング検査でマイコプラズマ陰性となった.本事例は,外部より導入した初妊牛がM. bovisを保菌し,分娩後に感染を拡大させたと考えられた.このため,導入牛の多い地域では,バルク乳を用いたマイコプラズマ検査を定期的に行う必要があると考えられる.
小動物臨床関連部門
  • 井上 紗季, 酒井 洋樹, 米丸 加余子, 栁井 徳磨
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    ミニチュア・ダックスフンド(M. ダックス)の炎症性結直腸ポリープ(ICRP)の細胞学的診断に有用な指標を確立するために,M. ダックスの ICRP16例(ICRP群)と,正常な腸,炎症性腸疾患及び腫瘍性疾患の計53例(non-ICRP群)のスタンプ標本を細胞学的に評価した.ICRP群の組織標本では粘液塊,骨化生及び多核巨細胞が存在し,12例(75.0%)の細胞診標本にも多核巨細胞がみられ,non-ICRP群の1例(1.9%)と比較し有意に多く(P<0.05),ICRPの組織診断に対する細胞診での多核巨細胞の検出の感度及び特異度,陽性的中率及び陰性的中率はそれぞれ,75.0%,98.2%,92.3%及び93.2%であった.以上より,M. ダックスのICRPの細胞学的診断には多核巨細胞の検出が有用であることが示唆された.
獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 萩原 晶代, 斉藤 守弘, 石川 義春, 門田 耕一
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    59頭の牛白血病ウイルス(BLV)感染牛においてリンパ系腫瘍を認め,病理組織学的,免疫組織化学的に調べた.56例はCD20とCD79aが陽性の多形型B細胞性リンパ腫で,細胞学的には多形性と異型性を特徴としていた.そのうちCD5の免疫染色が可能な54例では,すべての症例が陽性を示した.1例では胎子の皮下組織にも多形型のリンパ腫を認め,母牛のリンパ腫からの転移によるものと考えられた.残りの3例は前駆Bリンパ芽球性白血病,リンパ形質細胞様リンパ腫,γδT細胞性リンパ腫と診断され,多形型リンパ腫とは細胞形態と免疫表現型が異なっていた.このような組織型は主にBLV陰性牛でみられ,ウイルスとは関係のない可能性が高い.本研究の結果より,牛のリンパ系腫瘍は組織学的,免疫組織化学的に明確な疾病単位に分類できることが示された.
  • 水谷 浩志, 久保田 菜美, 宗村 佳子, 松村 藍, 山本 智美, 木村 昌伸, 今岡 浩一
    原稿種別: 短報
    2014 年 67 巻 3 号 p. 204-207
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    2007年から2013年にかけて,東京都内の犬の抗Brucella canis抗体保有状況をマイクロプレート凝集反応試験で調査するとともに,飼い主に対するアンケート調査を行った.その結果527頭中44頭(8.3%)が抗体陽性であった.陽性率は全国平均値(3.0%)よりも高かったが,年度が新しくなるにつれ低下する傾向がみられた.性別,品種別,収容地区別,年齢層別,体重別の抗体陽性率に有意差は認められなかった(P ≥ 0.05).アンケート結果から,飼育犬は感染犬との交尾よりも,感染犬との接触あるいは本菌に汚染された屋外環境から感染している可能性が示唆された.
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