日本獣医師会雑誌
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67 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 内山 大士, 佐藤 礼一郎, 恩田 賢, 牧野 祥之, 宇根 有美, 伊東 正吾, 武藤 眞, 和田 恭則
    原稿種別: 短報
    2014 年 67 巻 6 号 p. 405-408
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    生後5日齢で頸部心臓逸所症と診断されたホルスタイン種乳牛が2度分娩した後,不受胎と慢性乳房炎により7歳1カ月齢で病理解剖に供された.頸部皮下には大量の脂肪沈着が認められ,心膜はハンモック状を呈し,第一頸椎から尾側へ33cmの部位から第四肋骨内側面まで達していた.心臓は勾玉状を呈し,心尖を頭側,心底を尾側に向けていた.心臓の形態異常として右心室肥大,大血管異常として両頸動脈起始異常,動脈管開存及び肺動脈拡張が認められた.胸骨は大小17個の骨片で構成されており,逆三角形を呈していた.本疾患は合併奇形や成長に伴う心機能の不適応により死亡に至るが,本症例は心臓の位置や血管走行に異常が認められたものの,大量の脂肪組織による頸部心臓の保護と右心室肥大による循環確保で長期生存及び正常な泌乳能力が認められた1例であった.
  • 入部 忠, 山下 太郎
    原稿種別: 短報
    2014 年 67 巻 6 号 p. 409-412
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    多血症を確認し,6カ月間経過観察を実施していた15カ月齢の黒毛和種去勢牛が斃死した.本症例は発育不良が著しく,斃死に至るまでの経時的な血液検査では,赤血球数が常に高い値で推移していた.剖検では右心室壁の肥厚,心室中隔における欠損孔が確認された.病理組織学的検査の結果,肺高血圧症の所見に加えて,腎臓ではメサンギウム融解を特徴とする分節性の糸球体病変が認められた.他に大脳における散発性の出血,壊死及び回腸粘膜下組織における動脈壁のフィブリノイド変性が確認された.本症例では先天性心疾患,二次性の肺病変及び多血症がみられ,これらが腎糸球体病変の病因と考えられた.牛の先天性心疾患における腎糸球体病変に関する報告は無く,本症例は初の報告例である.
  • 村山 丹穂, 楠原 徹, 井野 壽麿, 谷村 信彦, 播谷 亮, 山田 学
    原稿種別: 短報
    2014 年 67 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    2010年6月,2011年3月実施の発育不良豚の病性鑑定で豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)と診断した症例に,多核巨細胞を伴う非化膿性髄膜脳炎を3例認めた.全例で神経症状はなく,脳,肺,扁桃及び血清から豚サーコウイルス2型(PCV2)の特異遺伝子を検出した.病理組織学的には大脳及び脳幹部にマクロファージ浸潤と多核巨細胞形成を伴う非化膿性髄膜脳炎を認めた.脳における多核巨細胞の細胞質には透過型電子顕微鏡下でライソゾームを認め,マクロファージ由来と考えられた.In situ hybridization及び免疫組織化学的染色では中枢神経にPCV2遺伝子及び抗原を認めなかった.多核巨細胞を伴う肉芽腫性炎は脳以外にリンパ組織でも認められ,今回の脳炎はPCVADの肉芽腫性病変に関連し形成された全身的病変の一つと推察された.
小動物臨床関連部門
  • 木村 唯, 嶋田 恵理子, 宮本 忠, 鳩谷 晋吾
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 6 号 p. 419-425
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    細菌感染症で当院に来院した犬と猫から分離された腸内細菌科細菌において,18%のEscherichia coli(32株),44%のKlebsiella pneumoniae(14株),43%のCitrobacter spp.(3株),2%のProteus mirabilis(1株)及び12%のEnterobacter spp.(3株)が第三世代セファロスポリン(3rdCEP)に耐性であった.3rdCEP感受性腸内細菌科細菌感染症例はおもにCEP系薬とフルオロキノロン系薬の投与により治癒した.3rdCEP耐性E. coli感染症例はおもにホスホマイシン(FOM)やドキシサイクリン(DOXY)が,3rdCEP耐性K. pneumoniae感染症例はDOXY,アミカシン(AMK)及びファロペネムが,3rdCEP耐性Citrobacter spp.感染症例はAMK,FOM及びスルファメトキサゾール・トリメトプリムが,3rdCEP耐性P. mirabilis感染症例はクロラムフェニコールが,3rdCEP耐性Enterobacter spp.感染症例はオフロキサシンが投与された.これら感受性のある抗菌薬による治療でほとんどの症例が治癒した.
  • 嶋田 恵理子, 木村 唯, 宮本 忠, 鳩谷 晋吾
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 6 号 p. 426-431
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    犬と猫のメチシリン感受性(MS)とメチシリン耐性(MR)ブドウ球菌感染症の治療法と治療成績について検討した.MSブドウ球菌は多くの抗菌薬に感受性で,おもにセファロスポリン系薬の投与により,ほとんどの症例が治癒した.MR Staphylococcus intermedius groupはテトラサイクリン系薬に90%以上,クロラムフェニコール(CP)に52%,ホスホマイシン(FOM)に34%が感受性で,MRコアグラーゼ陰性ブドウ球菌はテトラサイクリン系薬やスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)に80%以上,オフロキサシン,CP,ゲンタマイシン(GM),アミカシン,FOMに47~69%が感受性で,MR Staphylococcus aureusはSTに100%,CPに80%,GMに67%,ドキシサイクリンに50%が感受性であった.これら感受性のある抗菌薬による治療でほとんどの症例が治癒した.
獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 山崎 伸二
    原稿種別: 総説
    2014 年 67 巻 6 号 p. 433-441
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
  • 小野 一晃
    原稿種別: 原著
    2014 年 67 巻 6 号 p. 442-448
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
    市販鶏肉250検体を対象として,カンピロバクターとサルモネラによる汚染状況を調べた.カンピロバクターは国産鶏肉の61.0%(94/154検体),輸入鶏肉の28.1%(27/96検体)から分離された.分離株の多くはCampylobacter jejuniであったが,輸入品は国産品に比べC. coliの割合が高かった.カンピロバクター汚染菌数は,多くが3.0log MPN/100g未満であった.サルモネラは国産鶏肉の47.4%(73/154検体),輸入鶏肉の17.7%(17/96検体)から分離された.国産鶏肉から分離されたサルモネラの主要な血清型はSalmonella Infantisであったのに対し,輸入鶏肉ではS. Enteritidisであった.サルモネラ汚染菌数は多くが2.0log MPN/100g未満であった.薬剤感受性試験の結果,カンピロバクター(5薬剤を供試)の42.4%(114/269株)及びサルモネラ(12薬剤を供試)の100%(90/90株)が,供試した薬剤の1剤以上に耐性を示した.C. jejuniは,国産鶏肉由来株の35.2%(64/182株),輸入鶏肉由来株の45.3%(24/53株)がナリジクス酸(NA),シプロフロキサシン,ノルフロキサシン,オフロキサシンの4剤に耐性を示した.また,輸入鶏肉由来のC. coli 8株はエリスロマイシンに対して耐性を示した.サルモネラについては,S. Infantisの8/66(12.1%),S. Enteritidisの10/11(90.9%)がNAに対して耐性を示した.
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