日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
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68 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 矢口 裕司, 芝原 友幸, 楠原 徹, 小林 勝, 小林 秀樹
    原稿種別: 短報
    2015 年 68 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    下痢及び発育不良が認められた40日齢離乳豚3頭について,病性鑑定を実施した.肉眼的に,回腸粘膜が肥厚し,パイエル板も腫大し,明瞭に認められた.組織学的には,回腸粘膜パイエル板における多数のリンパ小節形成及び同部位の粘膜絨毛の萎縮が認められた.さらに回腸粘膜上皮細胞には多数のフィラメント状細菌の付着が認められた.この細菌は,数珠状を呈し,グラム染色には陽性または陰性を示した.電顕的には,同細菌はセグメント細菌(Segmented filamentous bacteria : SFB)の形態的特徴を示した.検索した3頭とも回腸には本菌の存在以外に,下痢に関係すると考えられる要因は検出されなかった.以上のことから,豚の回腸においてSFB重度感染により,下痢が誘発される可能性が示唆された.
  • 山本 敦子, 信本 聖子, 小林 亜由美, 和田 好洋, 稲垣 華絵, 花房 泰子, 芝原 友幸
    原稿種別: 短報
    2015 年 68 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    北海道内の黒毛和種牛飼養農場で,子牛1頭が出生直後から起立不能,後弓反張及び意識混濁等の神経症状を呈し,生後3日目で死亡した.剖検では,小脳の大部分の領域で出血と軟化が認められた.肝臓及び腎臓に白色結節が散見され,脾臓に赤色結節が1カ所みられた.組織学的に,小脳では出血性壊死性炎症がみられ,病変部には多数の真菌がみられた.肝臓,腎臓及び脾臓には壊死を伴う真菌の増殖と肉芽腫の形成がみられた.真菌の形態と,小脳病変部のパラフィン切片から得られたDNAサンプルを用いた分子生物学的解析の結果より,本真菌はMortierella wolfiiM. wolfii)と同定され,本症例は新生子牛のM. wolfii感染症と診断された.
小動物臨床関連部門
  • 矢部 摩耶, 小出 和欣, 小出 由紀子
    原稿種別: 原著
    2015 年 68 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    当院で胆石を認め外科的に胆囊を摘出した犬50症例の回顧的研究を実施した.大部分が中高齢犬であったが,10%は1歳未満であった.胆石の含有成分は炭酸カルシウムが最多で,その他ビリルビンカルシウム,タンパク,脂肪酸カルシウム,リン酸カルシウム及びコレステロールを認めた.胆汁細菌培養の陽性率は31%であった.病理組織検査も含め全症例で何らかの基礎疾患あるいは合併症を認めた.術後死亡率は全体の10%であり,無症状の13例,肝外胆管閉塞(EHBO)のない34例及びEHBO併発の16例ではそれぞれ0%,3%及び25%で,EHBOの併発は術後死亡率を高める要因の一つと考えられた.3割以上の症例で認めたEHBOや胆石に続発すると思われる胆囊炎及び胆囊破裂の発症リスクを考慮すると,無症状の胆石症例においても外科的治療は選択肢として考えるべきであり,少なくとも基礎疾患の精査は必要と思われた.
  • 渡邊 俊文, 望月 俊輔, 三品 美夏
    原稿種別: 短報
    2015 年 68 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    7歳齢,去勢雄,体重6.1kgのパピヨンが排尿困難と会陰部皮下の膨隆を主訴に紹介来院した.逆行性尿路造影及びCT検査において尿道と連絡する囊状構造が認められ,尿道憩室と診断した.尿道内視鏡検査では尿道粘膜において憩室と連絡するスリット状の開口部が確認された.外科的に憩室の切開を行い憩室開口部の閉鎖を行ったところ排尿困難は改善し,現在まで憩室の再発はみられず良好な経過が得られている.
  • 亀田 栞, 岡村 泰彦, 宮崎 あゆみ, 片山 泰章, 鈴木 仁史, 宇塚 雄次
    原稿種別: 短報
    2015 年 68 巻 2 号 p. 128-133
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    11歳齢のミニチュア・ダックスフンドが2週間前からの原因不明の発熱を主訴に来院した.この症例は2週間前に元気消失と腹圧の上昇を主訴に他院を受診しており,発熱と白血球数の増加,ALPの上昇が認められていた.当院にてエコー検査を実施したところ,左側肝臓のシスト様腫瘤を確認したためFNAを行った.細胞診にて多数の好中球が認められたため,肝膿瘍と仮診断した.CT画像所見は人で報告されている肝膿瘍のものとほぼ同一であった.3日後に試験開腹を行ったところ,膿瘍は外側左葉基部に存在していたため,完全肝葉摘出術による切除及び胆囊摘出を行った.手術後には白血球数の異常な増加,眼振,低血糖,低アルブミン血症が認められたが,翌日夕刻より症例の状態は快方に向かい,手術から8日後に退院した.現在,術後208日を経過しているが,動物は再発もなく状態は良好である.
獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 佐伯 潤, 山本 精治, 矢部 眞人, 長崎 淳一, 林 健一
    原稿種別: 原著
    2015 年 68 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    狂犬病予防法は91日齢未満の幼齢犬にワクチン接種義務を課していない.このようなワクチン未接種幼齢犬は,移行抗体による防御免疫を有する場合もあるが,その消失に伴い免疫を失うと考えられる.狂犬病発生時,幼齢犬が本病の拡大や人への伝播に関与する可能性もあるが,国内での抗体保有状況に関する報告は少なく,その実態は明らかではない.そのため,91日齢未満の幼齢犬における狂犬病中和抗体の保有状況を調査し,狂犬病発生時を考え,家庭で飼育されている幼齢犬の狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価の推移を調査した.その結果,中和抗体価8倍以上の幼齢犬は,216頭中34頭と少なかった.幼齢犬への狂犬病ワクチン接種後の中和抗体価は,一時的な上昇にとどまるか,十分に上昇しなかった.しかし,その後の追加接種により感染防御が可能な有効抗体価が得られた.
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