2005年に,滋賀県内の肉牛飼養農場で飼養されていた37〜40日齢の子牛3例が急性経過で死亡した.いずれの症例も,空腸の腸間膜リンパ節に,高度な腫大が認められた.病理組織学的検査では,小腸粘膜及び大腸粘膜の化膿性病変が特徴的であった.免疫組織化学的検査では,回腸や結腸陰窩膿瘍からMannheimia(M.)varigena抗原が検出された.細菌学的検査では,腸内容からMannheimia属菌が分離され,16S rRNAの塩基配列解析により,M. varigenaと同定された株及びMannheimia属菌5亜種に相同性を示さない株であった.また,E. coli,Clostridium perfringens,コロナウイルス及びコクシジウムがあわせて認められた.本症例はM. varigena及びMannheimia属菌が関与する腸炎であり,宿主の免疫状態及び腸炎を起こす他の病原体の存在が腸炎の重篤化につながるものと考えられた.
前肢の腫脹と疼痛を呈した猫2例が鹿児島大学附属動物病院を受診した.2例の臨床所見は外傷性炎症疾患と類似していたが,パンチ生検により炎症を伴った軟部組織原発性リンパ腫が確定した.また,2例中1例でCTとMRI検査を実施したところ,腫瘍の浸潤範囲を詳細に描出することができた.2例の病変部はいずれも広範囲に浸潤し,一般状態が低下していたため化学療法を選択した.しかし,抗癌剤投与後に有害作用と思われる高アンモニア血症を呈し,急速に状態が悪化して死亡した.本腫瘍は炎症徴候を示唆するため,鑑別が困難である.また,急速な病態進行が考えられるため,早期治療のための確実な診断法として組織生検を優先するべきである.
8カ月齢,避妊雌,体重4.6kgのイタリアン・グレーハウンドが右側の前肢跛行を主訴に紹介来院した.X線及びCT検査において右側前腕の重度変形を認めた.過去に橈尺骨骨折の治療履歴があったことより骨折時の外傷に起因する前腕変形であると診断した.変形が重度であり,従来のコンピュータ画面上での三次元立体構築像のみを使用する変形矯正方法ではランドマークの設定が行いにくく,術中の矯正程度の判断が困難で術後にアライメント不良が生じる可能性があった.そのため,CTデータより3Dプリンターモデルを作成し事前にシミュレーション手術を実施し,骨切り部分の確認やインプラント形状設定を行い矯正が問題なく実施できることを確認した後,実際の手術を行った.術後の経過は良好で骨癒合が認められ患肢の使用も良好であった.
屋内で飼育されている犬猫が使用している敷物について,病原微生物の汚染状況を調べた.また,これら病原微生物の除去を行う目的で,一般的な洗浄を行った時の除去効果についても検討した.2週間から最大1年間にわたって,犬や猫が使用した敷物23検体では,一般細菌数並びに真菌数の平均は,それぞれ5.7log CFU/100cm2並びに4.1log CFU/100cm2であった.23検体中10検体(43.4%)から大腸菌が分離され,菌数は最も多いもので350(CFU/100cm2)であった.Pasteurella multocidaは1検体(4.3%)から分離されたが,Salmonellaは検出されなかった.また,使用した敷物9検体(4.98~9.59log CFU/100cm2)について,ペット専用の洗濯用洗剤を用いて洗濯したところ,いずれの検体も洗濯前の一般細菌数に比較して洗濯後の菌数は減少し,9検体中8検体が検出限界以下(3.0log CFU/100cm2)まで減少した.これらの結果から,これら動物の敷物を洗濯して除菌することにより衛生的に保つことは,公衆衛生学的な観点から重要であると思われた.