山形県において発生した子牛の腸管外病原性大腸菌(Extraintestinal Pathogenic Escherichia coli : ExPEC)感染症2症例の詳細と,感染及び発症機序解明のため実験的にExPECを培養細胞に接種し,細胞反応を観察したので報告する.2症例に共通した所見として血様胸水の貯留,心,肺,大網及び腸管の出血,各症例については大脳,肝臓,腎臓及び脾臓の出血を認め,主要臓器からExPECを分離した.分離されたExPECをHep-2細胞に接種したところ,ExPECの細胞内侵入能と,感染細胞の脱落・細胞質縮小に代表される細胞死を確認した.以上より,今回の症例において,ExPECは細胞内へ侵入することで細胞に対し傷害を与え,結果として出血等の組織傷害を引き起こした可能性が示唆された.
尿蛋白をディップ・スティック(DP)法と乾式生化学分析装置(乾式法)による尿蛋白/尿クレアチニン比(UPC)で評価し,液体法によるUPCと比較した.DP法による判定が-であれば非蛋白尿(UPC<0.2)であった.±,+,2+の場合は非蛋白尿だけでなく,ボーダーライン(犬UPC 0.2〜0.5,猫0.2〜0.4)や蛋白尿(犬UPC>0.5,猫>0.4)も示し,UPC測定の必要があると考えられた.犬,猫とも,乾式法と液体法によるUPCは高い相関係数を示し,乾式法は液体法の代用になると考えられた.ただし,乾式法によるUPCは液体法によるUPCより高い値を示し,補正式(犬y=0.8851x-0.1316,猫y=0.7227x-0.0093)を用いた液体法によるUPCへの換算値を用いるほうがよいと考えられた.
ワクチン接種後の経過年数と犬ジステンパーウイルス(CDV),犬パルボウイルス2型(CPV-2),犬アデノウイルス1型(CAdV-1)及び犬アデノウイルス2型(CAdV-2)の免疫状態を24カ月齢以上の犬178頭の血清を用いて抗体検査により検討した.その結果,ワクチン効果の保有率及び抗体価は4ウイルスともに経過年数に伴い減少する傾向が観察された.さらに抗体価の変動係数を検討したところ,ワクチン接種後2年以降,CDV,CAdV-1及びCAdV-2において顕著な上昇が観察された.以上の成績から,特にワクチン接種後長期間経過している例では抗体価が減弱している例が多く,そのために免疫状態の個体差が大きくなるものと思われる.このため,特に免疫介在性疾患等の理由でワクチン接種を避けるべき例に対して定期的な抗体検査により免疫状態をモニタリングする必要性があると思われる.