傾蹄は反軸側蹄壁の傾斜が異常に急峻となる蹄であり,それは反軸側蹄壁の成長が速いため起こる.そのため,傾蹄牛の反軸側蹄壁は蹄底にかぶさるように湾曲し,反軸側蹄壁の外面で着地・負重することが散見される.当家畜診療所管内のタイストール牛舎で飼育されるホルスタイン種経産牛で傾蹄を呈した牛7頭のと畜場材料を用いたComputed tomography(CT)検査では,末節骨の反軸側辺縁の骨吸収による先鋭化(3/7:所見を認めた頭数/検査総頭数,以下同様),末節骨以外の骨増生(2/7),末節骨の骨折(2/7),末節骨の骨増生(2/7),末節骨底面の変形(1/7)が観察された.傾蹄牛の趾骨におけるこのような骨変化は,不自然な肢勢による力学的負荷が,末節骨のみならず中節骨,基節骨を含む趾骨全体に及んでおり,強い影響を与えていることを示していた.
9歳齢,未不妊雌のウサギが1週間前からの尿漏れを主訴に来院した.腹部X線検査及び超音波検査にて腹水貯留と石灰化を伴う子宮腫瘤が認められた.卵巣子宮摘出術時に採取された腹水を用いた細胞診とセルブロック法では悪性上皮系腫瘍細胞が観察された.子宮腫瘤の病理組織検査では強い異型性を有する上皮系腫瘍細胞と骨軟骨を形成する間葉系腫瘍細胞が混在して増殖していた.よって本症例は悪性ミューラー管混合腫瘍(異所性)と診断され,きわめてまれな症例と思われた.