軽種馬の育成調教や競走成績に影響を及ぼす発育期整形外科的疾患(DOD)を回顧的に明らかにすることを目的に,国内の軽種馬生産牧場に対して,育成期全般に罹患したDODを含むすべての疾病について聞き取り調査を実施した.その結果,DODとして,腰痿,近位部関節の離断性骨軟骨症,骨端炎,肢軸異常,屈曲異常及び軟骨下骨囊胞があげられた.競走馬登録された個体の中で,種子骨炎,腱炎,外科手術を要する疝痛を罹患した個体は,病歴があげられなかった個体と比較して,初出走の時期が有意に遅延していた.一方で,購入前検査で発生率が高い遠位部関節の骨病変については競走への影響を訴える回答は得られず,深刻な症状を呈していない例が多いと考えられた.
沖縄本島で山羊12頭を飼養する肉用繁殖山羊農場において,発咳と起立困難を主徴とする1頭の山羊の病性鑑定を行った.剖検では,肺の肝変化と腫大,心囊水貯留及び腸間膜リンパ節の出血と腫大がみられた.組織学的には,肺の気管支周囲のリンパ濾胞過形成,気管支粘膜過形成を伴う化膿性気管支肺炎及び間質性肺炎が認められた.細菌学的には,肺からMycoplasma ovipneumoniaeとBibersteinia trehalosiが分離された.免疫組織化学的検査に供するため,分離されたM. ovipneumoniaeを用いて兎免疫血清の作製を試みた.代謝阻止試験による力価測定の結果,1,280倍の高い力価が得られ,免疫組織化学的検査では病変部にM. ovipneumoniaeの陽性抗原が認められた.以上のことから,本症例はM. ovipneumoniaeとB. trehalosiによる混合感染症と診断した.
母豚160頭を飼養する一貫生産農場において,下痢の集団発生が周期的に認められた.発症豚は1〜3日齢に限局しており,発生周期は2〜4週間程度であった.すべての発症豚に対症療法を施したところ,3〜5日で全例が回復し,死亡率の上昇や出荷日齢の遅れは認められなかった.発症豚の剖検では小腸壁の菲薄化,病理組織学的検査では小腸絨毛の萎縮及び粘膜上皮細胞の空胞変性が観察された.また,病原の検索ではC群ロタウイルス(RVC)の特異遺伝子が発症豚のみから検出されたことから,本症例へのRVCの関与が示唆された.
歯周病に関連して口腔鼻腔瘻を発症した犬56例を調査したところ,臨床症状としてくしゃみや鼻汁などの鼻腔症状を呈するものが多く,罹患歯は犬歯が多かった.重度歯周病の犬100例と比較すると,口腔鼻腔瘻は重度歯周病より高齢で発症した.重度歯周病に比べ,口腔鼻腔瘻はミニチュアダックスフントに好発した.治療として罹患歯の抜歯及びフラップ形成を行い口腔鼻腔瘻の閉鎖手術を実施した群の予後は良好であったが,罹患歯の温存を目的とした治療ではほとんどの症例で再発が認められた.
右側の腎臓腫大を呈する4カ月齢,雌のアメリカンカールに対し各種画像検査を実施し,右腎の形態異常から重度水腎症もしくは囊胞性疾患が疑われたため試験開腹を実施した.後大静脈の背側を迂回する尿管の走行異常(retrocaval ureter)が観察されたが,結石や腫瘤などを含め明らかな尿管閉塞を疑う所見は認められなかった.腫大した右腎に対し腎摘出術を実施した.右腎の病理組織検査では腎周囲偽囊胞を伴った水腎症と診断された.