牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の持続感染(PI)牛を簡易に検出可能な毛包を用いた免疫ペルオキシダーゼ(毛包IPO)法を確立した.PI牛41頭,非感染牛60頭の尾房部から得た毛包材料の毛包IPO法の成績は,血液を用いたウイルス分離(VI)及びRT-PCRのそれらと高い一致率を示したが,ウイルス血症を呈した急性感染牛2頭では陰性となり,RT-PCRの成績とは異なった.毛包IPO法は,高い移行抗体の影響によりVI陰性となったPI子牛においても陽性であった.また,毛包材料は-20℃以下の長期保存が可能であった.毛包IPO法によるPI牛の検出は,VI及びRT-PCRと同等の精度で,安価かつ短時間での実施が可能であった.本法の活用は,PI疑い牛及び移行抗体保有牛などの個体検査に適していると考えられ,既存の検査法との組み合わせにより,PI牛の検出が効率的に行えることが示唆された.
ウサギの不正咬合では,臼歯の棘の切削処置のために頻回の麻酔が必要となる個体があり,頻回麻酔の影響が懸念されている.今回,当院で歯科処置のために1個体当たり39~103回の頻回の麻酔を実施したウサギ11例について,麻酔回数及び年齢に対する回復時間について検討を行った(頻回麻酔群).また,頻回麻酔群に含まれない同様の歯科処置を行ったウサギ67例について,初回麻酔時に同様の項目について調査を行った(コントロール群).頻回麻酔群では,麻酔回数と回復時間に相関がほとんどなかった.一方,加齢に伴い回復時間が有意に延長し,コントロール群でも同様の結果が得られた.両群の同じ年齢区分の比較で有意差はなかった.したがって,歯科処置などの侵襲の少なく,短時間の麻酔では頻回麻酔の影響よりも,加齢に伴う影響の方が大きいと推察された.
疾病リスクの高いStreptococcus suis 株の侵淫状況を調査するため,名古屋市内と畜場に搬入された豚の細菌性心内膜炎病巣部及び扁桃から分離したS. suis 各119株(33農家)及び78株(27農家)について,PCR法により血清型別(莢膜合成遺伝子cps),推定multilocus sequence typing(pST型)及び病原性関連遺伝子のプロファイリングを行った.細菌性心内膜炎からは,疾病リスクが高いと推定されるcps2J+のpST1c及びpST27c株が102株(30農家)85.7%と高率に検出された.cps2J+株のpST型は,農家ごとにST1cあるいはST27cに偏る傾向がみられたが,各pST型株が検出された農家数には差は認められず,両pST型が同程度に侵淫していることが示された.cps2J+株の遺伝子プロファイルは,人患者からも分離されるpST1c/epf+/sly+/mrp+及びpST27c/epf-/sly-/mrp+型が多数を占め,豚を取り扱う関係者への啓発が重要であると思われた.