神奈川県内で生産されたコーンサイレージ11検体及びグラスサイレージ5検体を対象に,18種類のカビ毒について汚染実態を調査した.その結果16検体中15検体からカビ毒が検出された.しかし,検出量は全体的に低く,管理基準値が設けられているデオキシニバレノール(DON),ゼアラレノン(ZON)及びアフラトキシンも管理基準値以下であった.一方で,トリコテセン類とフモニシン族あるいはトリコテセン類,フモニシン族及びZONの複合汚染が多く認められた.多くの家畜で複数のカビ毒を摂取した場合の毒性の相加作用及び相乗作用が報告されており,複合汚染による影響が危惧される.また,肉眼的に変敗,カビの発生が多く観察されたものの,カビ毒はほとんど検出されない飼料があった一方で,肉眼的には異常が認められなかった多くのサンプルからカビ毒が検出されたことから,サイレージの肉眼的な状態とカビ毒の有無は連動しないことが示唆された.
間欠的かつ重度の下部消化管出血を呈した7歳齢,雌のミニチュア・ダックスフンドは下部消化管内視鏡検査において大腸全域に及ぶ粘膜表面の毛細血管の拡張・蛇行・集簇が観察された.それら特徴的な血管異常から大腸血管拡張症が強く疑われ,外科治療として病変部を含む直腸の一部を温存した大腸亜全摘出術が実施された.術後の出血便の頻度は激減し,合併症と考えられた便失禁や頻回の軟便の排泄は経過を追うごとに鎮静化した.本症例は術後688日が経過した時点において輸血を行うことなく安定した自宅管理が継続されている.摘出した大腸の病理組織学的検索では,粘膜及び粘膜下組織における広範な血管拡張が観察されたことから,本症例は本邦初となる犬の大腸血管拡張症の罹患例であると考えられた.
Clostridium difficile は,人の偽膜性大腸炎,抗菌薬関連下痢症の原因菌となる.C. difficile は,家畜や臨床患者から分離されることもある.そのため,伝播経路は不明であるが,市販肉と人の感染の関連及びレゼルボアとしての家畜の可能性が示唆されている.今回,牛におけるC. difficile の保菌状況について明らかにするために,成牛糞便119検体及び子牛糞便47検体からC. difficile を分離しPCRリボタイピング,毒素遺伝子の検出を実施した.成牛糞便からは分離されなかったものの,子牛糞便17%(8/47検体)から16株のC. difficile が分離された.16株は10のリボタイプに分類された.すべての株が何らかの毒素遺伝子を保有し,69%はtcdA,tcdB,cdtA/B の3種類の毒素遺伝子すべてを保有していた.以上の結果より,国内の子牛に毒素産生性のC. difficile が分布することが示された.