牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)持続感染牛(PI牛)の血清中BVDV遺伝子量(コピー数)を調査し,RT-PCRによる診断材料として移行抗体を保有する哺育期PI牛血清が妥当であるかを検討した.また,PI牛摘発のスクリーニングに用いられるプール血清とした場合の影響も検討した.抗体陽性血清の最小値は2.17×104コピーと,RT-PCRの検出限界(約6.25×103コピー)以上であったが,抗体価が高いほどコピー数は有意に低かった.既報による,初乳中の抗体によりBVDV量が一過性に低下するとの結果が,今回初めて野外材料を用いて確認された.プール血清のRT-PCRは低コピー数検体の希釈血清で不明瞭な反応となった.これらから,哺育期PI牛血清をRT-PCRの診断材料とすることは妥当であるが,プール血清はコピー数の一過性低下を考慮する必要があると考えられた.
Hansen Ⅱ型椎間板ヘルニアと診断し,治療及び経過観察していた避妊雌のシェットランド・シープドッグが進行性運動失調,声のかすれを示した.スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)1遺伝子変異解析は変異型ホモ接合だった.第859病日に呼吸不全で死亡したため,病理解剖を実施し脳と脊髄の組織検査を行った.病理組織学的に脊髄白質のミエリン脱落と軸索変性及び,び漫性の星状膠細胞増殖を認め,腹角の神経細胞の消失や残存する神経細胞の色質融解が認められた.これらの変化は変性性脊髄症(DM)とほぼ一致していた.SOD1遺伝子の変異型ホモ接合を持ち,進行性の運動失調を呈するシェットランド・シープドッグは,DMの可能性を鑑別診断として考慮する必要があると考えられた.
アデノウイルスは,鰭脚類において重度の肝炎を起こす病原体であり,本邦でも過去に水族館において発症の報告例がある.今回,カリフォルニアアシカ2頭において急性肝炎の発症がみられ,精査したところ新規アデノウイルスの感染であることが示された.治療経過より,早期の治療開始により回復すること,及び症状が消失した後でも持続的なウイルスの感染がみられたため,衛生管理に注意が必要であることが示唆された.