暑熱期の乳牛は,酸化ストレス状態にあることが知られている.泌乳牛において,トレハロースの飼料添加による酸化ストレス指標の改善が報告されているが,暑熱期での効果は不明である.本研究では,6頭の泌乳牛を対照区とトレハロース区(1.5%添加)に分け,2群×2期のクロスオーバー試験を暑熱期と適温期に実施し,血液,乳汁及び第一胃内容液の酸化ストレス指標への影響を調べた.暑熱期の飼料摂取量は,トレハロース区が対照区よりも多く(P<0.01),第一胃液中の原虫数は,暑熱期,適温期ともにトレハロース区においてEntodinium 属が多かった(P<0.05).抗酸化能を表す1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性は,暑熱期,適温期ともにトレハロース区の乳汁で高く(P<0.05),血漿でも暑熱期のトレハロース区が高い傾向を示した.これらのことから,暑熱期における泌乳牛の飼料へのトレハロースの添加は抗酸化能の改善に有効と考えられた.
交雑種(黒毛和種×ホルスタイン種)の雄子牛が,出生後から慢性進行性の歩様異常,起立難渋,起立位での体躯動揺及び揺開脚姿勢を呈した.68日齢時には意識清明であったが,自力起立ができなかった.企図振戦はみられなかったが,臨床症状より小脳の異常を疑った.病理解剖では中枢神経系に明らかな異常は認められなかったが,病理組織学検査において小脳でプルキンエ細胞の変性・脱落,及び軸索腫大が認められ,小脳皮質変性症と診断された.牛の小脳皮質変性症は遺伝的背景が疑われる疾患であるが,今回の症例は交雑種であり,本症が特定品種だけの疾患ではないことが示唆された.
一動物病院を初受診したセキセイインコ392羽を対象に,マクロラブダス症の疫学調査を実施した.さらに,陽性鳥の症状及び投薬による治療効果についても検討した.その結果,392羽中51羽(13.0%)からマクロラブダス症の病原真菌であるMacrorhabdus ornithogaster(MO)が検出された.性別陽性率は,雄の15.3%に対し,雌は7.5%であった.年齢別では,1歳未満が16.8%,1歳以上が9.5%であった.MO陽性鳥のうち,有症状率は76.5%であり,マクロラブダス症に関連する主な症状として,削痩(54.9%),嘔吐/嘔吐動作(33.3%),食欲不振/廃絶(27.5%)及び未消化便(11.8%)が認められた.MO消失までの平均日数は,1歳未満で18.4日,1〜3歳で34.3日,4〜6歳で21.0日,7歳以上で42.0日であり,年齢が進むほど治療に対する反応が低下する傾向が明らかとなった.また,治療後は全羽でMOは消失したが,3羽(5.9%)に症状改善がみられなかったことから,本症では早期発見,早期治療が重要と考えられた.
爪床悪性黒色腫の心臓転移がみられた犬の完全房室ブロック(CAVB)症例について,ブロック発生の形態学的基盤を明らかにすべく,心臓刺激伝導系を中心に詳細な病理学的検索を施した.本例は,死亡する11カ月前に右前肢の第5指に発生した悪性黒色腫の外科的切除術を受けていた.剖検時,心臓の割面では暗褐色〜黒褐色の腫瘍組織が,心筋層内に多発性の増殖病巣を形成していた.病巣部の組織学的検索により,悪性黒色腫の心臓転移と診断された.腫瘍性のメラノサイトは房室接合部領域にも重度に浸潤しており,房室結節は完全に消失していた.この病的機転はヒス束貫通部をも巻き込んでおり,当該部位の伝導系細胞は全長にわたって消失していた.このような房室伝導系病変が,インパルスの房室伝導を遮断したものとみなされた.
大阪府内で,平成29年10〜11月に,合計11頭の犬レプトスピラ症を疑う症例の届出があり,そのうち9頭が死亡した.疫学調査の結果から,8頭が同じ河川敷を散歩コースとしており,4頭の飼い主は同じ町内に居住していた.顕微鏡下凝集試験では,2頭が血清型Australisに対し,それぞれ2,560倍及び10,240倍の抗体価を示した.また,このうちの1頭の血液及び血清型を特定できなかった他の1頭の尿から,PCR法によってレプトスピラDNAが検出された.これらのことから,今回の流行事例は,同じ病原巣あるいは感染源から感染した可能性が考えられた.