2カ月齢のホルスタイン種子牛が,下痢を呈し斃死した.剖検では,口唇,舌,口蓋,食道及び前胃の粘膜の広範囲に重度の白色クリーム状の偽膜を伴った丘疹,び爛がみられた.組織学的に,口唇,口蓋,舌,第一胃,第二胃及び第三胃において,有棘細胞の顕著な増生と好酸性細胞質内封入体を伴う風船様変性による上皮の肥厚がみられた.免疫組織化学的に,病変部にパラポックスウイルス(PPV)家兎血清に対する陽性反応がみられ,超微形態学的に同ウイルス粒子が確認された.舌乳剤上清と第三胃のパラフィン切片からPPV特異遺伝子が検出され,PCR産物の制限酵素断片長多型解析並びに塩基配列から偽牛痘ウイルスに分類された.以上の成績から,本症例は前胃に広範な丘疹状病変を伴った偽牛痘と診断した.
臨床的に健常な犬123頭を対象に,動物専用のドライ式血液凝固分析装置(COAG2V)によるプロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),血漿フィブリノゲン濃度(Fib),トロンボテスト(TB)及びへパプラスチンテスト(HPT)の基準範囲を決定した.測定にはクエン酸血漿を用いた.項目ごとに測定値が正規分布していることを確認した後,四分位法で外れ値を除外し,測定値の平均値±1.96標準偏差を基準範囲とした.その結果,PTの基準範囲は7.1〜8.4sec,TBは11.7〜14.6sec,HPTは9.8〜16.2sec,APTTは13.7〜25.6secであった.Fibでは対数変換により正規分布化し,同様の方法で基準範囲を算出後に逆変換したところ,基準範囲は113〜385mg/dl であった.
慢性の貧血,削痩を呈した135カ月齢の雌黒毛和種が,解体後検査にて,高度な脾腫,気管気管支及び腸間膜リンパ節の腫大並びに赤色化を示し,内臓諸臓器では点状あるいは斑状出血巣,骨髄では暗赤色化が認められた.組織学的には,脾臓,リンパ節,骨髄における大型で多形性に富むリンパ球様腫瘍細胞の浸潤増殖,出血領域に腫瘍細胞の赤血球貪食像が認められた.免疫組織化学的には,腫瘍細胞はCD3に陽性,CD20及びIba-1に陰性を示したことから,本腫瘍はT細胞性リンパ腫と考えられた.本例は高齢で発症し,著明な赤血球貪食像が認められる特異なT細胞性リンパ腫の1例と考えられた.