日本獣医師会雑誌
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72 巻, 9 号
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産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 船守 足穂, 伊藤 弘貴, 河村 美登里, 細川 久美子, 鈴藤 和, 大倉 正稔, 芝原 友幸
    原稿種別: 短報
    2019 年 72 巻 9 号 p. 533-538
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    広島県内の一養豚農場で死産及び神経症状を呈する産子が散発した.2頭の剖検では心臓に線維素析出を認め,組織学的にはグラム陽性球菌を伴う化膿性髄膜炎及び線維素化膿性心外膜炎を認めた.主要臓器からはStreptococcus suis 血清型14型が分離され,脳,脊髄及び心臓の病変部にみられたグラム陽性球菌はS. suis 血清型14型に対する特異的抗体に陽性反応を示した.分離菌株はすべてパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)で同一パターンを示し,Multi-Locus Sequence Typing(MLST)ではSequence Type 1(ST1)に型別されたことから,本症例を同一クローン由来のS. suis 血清型14型ST1株による豚レンサ球菌症と診断した.本症例は,国内で初めてS. suis 血清型14型を免疫組織化学的染色により確定診断した貴重な症例であると考えられた.

  • 伊藤 陽輔, 高橋 健一, 岡本 実, 登石 裕子, 角田 修男, 田谷 一善
    原稿種別: 短報
    2019 年 72 巻 9 号 p. 539-544
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    後代検定事業で約4年間の待機期間を経て5歳齢で精液採取を再開したホルスタイン種種雄牛に,造精能の著しい低下が認められた.交尾欲,勃起能,射精能は正常であったが,精子濃度,総精子数,精子運動性及び精子生存率が低下して精子奇形率が上昇した.血中テストステロン濃度は正常レベルであり,ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン負荷試験によるテストステロン分泌は,正常反応を示した.精巣は著しく小さく,曲精細管精子形成層の菲薄化,曲精細管壁の肥厚及び弾性線維の波状多層化が認められた.精巣間質では,膠原線維の増生,小血管増殖,リンパ球や形質細胞集簇が散見された.右精巣上体精巣輸出管では,線維性肉芽による狭窄,閉塞が限局的に認められた.本症例牛は精巣間質を主体とする緩徐な血行性の滲出性炎を罹患し,精巣萎縮及び精子減少症を発症したと推察された.

  • 芝原 友幸, 山田 陽子, 土佐 進, 古田 信道, 山本 英子, 神原 正, 豊島 靖, 平野 慎二
    原稿種別: 資料
    2019 年 72 巻 9 号 p. 545-548
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー
小動物臨床関連部門
  • 渡邊 俊文, 野尻 康史
    原稿種別: 原著
    2019 年 72 巻 9 号 p. 549-553
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    腎疾患が疑われる犬62症例及び猫40症例において,血中クレアチニンとUP/C(尿蛋白/尿クレアチニン比)の間に弱い相関(相関係数:犬 0.11,猫 0.27)しか認められないことから,UP/Cは血中クレアチニンとは独立した指標であり,また血中クレアチニンが参考基準値(犬1.4mg/dl,猫1.6mg/dl )未満かつ蛋白尿を示す症例が犬で24症例(38.7%),猫で4症例(10.0%)あったことから,UP/Cは血中クレアチニンでは捉えられない早期かつ潜在的な腎疾患を検出できると考えられた.さらに,UP/Cに関して定量法とディップスティックを用いた半定量法との間に強い相関(1ランク以内の一致率:犬 95.2%,猫 90.0%)を示したことから,ディップスティック法の特長を生かした院内での迅速かつ簡便なUP/Cの測定が有効であると考えられた.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 秦 温子, 樋渡 佐知子, 三浦 奈緒美, 松尾 保雄, 芝原 友幸, 伊藤 博哉
    原稿種別: 短報
    2019 年 72 巻 9 号 p. 555-559
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

    2017年12月,長崎県内のと畜場において,発育不良,削痩,チアノーゼ等を呈し,病畜としてと畜解体された豚に,疣贅性心内膜炎及び肺動脈内壁の粟粒大結節が認められた.また,肺及び腎臓の点状出血や肝臓のうっ血,脾臓の脆弱化も認められた.細菌学的検査で,疣状物,心臓,腎臓,脾臓からActinobacillus pleuropneumoniae(App)が分離され,分離株は,血清型8であった.病理学的検査では,疣状物及び肺動脈の結節で,燕麦様細胞を伴う化膿性壊死性炎が認められ,壊死部にはグラム陰性桿菌が認められた.また,抗App血清型8免疫血清を用いた免疫組織化学では,グラム陰性桿菌に一致して陽性抗原が認められた.以上より,本症例はApp血清型8による疣贅性心内膜炎及び肺動脈炎と診断された.

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