京都府内の酪農場において,牛が食欲不振,発熱,発咳等の呼吸器症状,下痢等の消化器症状を呈したとの通報を受け,PCR及びウイルス分離検査による病性鑑定を実施した.その結果,複数の牛の糞便から牛アデノウイルス特異的遺伝子が検出され,牛アデノウイルス2型(BAdV-2)が分離された.また,急性期と回復期のペア血清を用いたウイルス中和試験によってBAdV-2抗体価の有意な上昇が確認され,本ウイルスの牛群内での流行と発症への関与が推察された.さらに,周辺地域のウイルス浸潤状況を把握するため,過去3年間に周辺農場で採取された乳用牛599頭分の血清を使ってウイルス中和試験を実施したところ,516頭からBAdV-2中和抗体が検出された.発生農場及び周辺農場でBAdV-2が常在化し,牛群内に広く浸潤している実態が明らかとなった.
山羊における国内初のロドコッカス・エクイ感染症例を沖縄県肉用繁殖山羊農場のボアー種で認め,その分離株が毒力関連抗原遺伝子(vapAとvapB)のPCRで陰性を示したことから,無毒株であると報告した(日獣会誌,68,751-755,2015).その後,新たな毒力関連抗原遺伝子vapN がイギリスの牛分離株で2015年に報告され,その病理所見が山羊症例ときわめて類似していたことから,今回,毒力の再検討を実施した.その結果,山羊分離株32株のすべて(100%)と土壌分離株29株中10株(34.5%)がvapN 遺伝子陽性であった.以上の成績から,国内初の山羊症例はvapN 遺伝子陽性の新型病原性プラスミドを保有する毒力株による感染症であったことが明らかとなった.
近医にて汎血球減少を指摘された1歳2カ月齢,未去勢雄のトイ・プードルが紹介受診し,骨髄検査を含む各臨床検査により,特発性再生不良性貧血と診断した.プレドニゾロンとシクロスポリンによる免疫抑制療法と顆粒球コロニー刺激因子とエリスロポエチンによるサイトカイン療法を実施したところ,第32病日に寛解に導入することができた.その後,良好に推移し,第89病日にはプレドニゾロンを休薬し,第395病日現在,シクロスポリン単独投与により寛解を維持されている.
青森県内水族館で飼育されているイルカのハプトグロビン(Hp)を改良ヘモグロビン結合アッセイ(HBA)で測定したところ,臨床症状や他の炎症マーカーが異常を呈さないバンドウイルカと異常が認められたバンドウイルカのHp平均値は各々2,119μg/ml,7,495μg/ml で有意差(P<0.01)があり,Hpはイルカにおいても炎症マーカーとなることが示唆された.また,肺膿瘍死亡例では,A/G比や赤血球沈降速度の悪化より早くHp値が8,157μg/ml に増加したことから,肺炎の早期診断に役立つ可能性があると考えられた.