2016年8月,放牧中の羊2頭(コリデール種,4歳,雌)が起立不能,強直性痙攣,呼吸促迫を呈し,血液検査でAST,ALP,CPK,GGT及びLDHの顕著な上昇,総ビリルビン濃度の増加,低Ca血症を認めた.鑑定殺を実施したところ,2頭ともに胃内容濾過物に黒色種子片が散見され,種子は遺伝子検査でロウバイ(Chimonanthus praecox )と同定された.また,発症前日に台風が通過したため,放牧地内には多数のロウバイの種子が落下していた.ロウバイの種子等にはアルカロイドの一種であるカリカンチンが含まれ,動物が摂取するとGABA阻害作用により神経症状を呈するとされている.以上より,本例は国内で初めて発生した,羊のロウバイの種子の摂取による中毒事例と考えられた.
黒毛和種牛繁殖農場で,妊娠牛約25頭の群にサツマイモを3カ月給与したところ,3頭が急死し,他の6頭が呼吸器症状と皮下気腫を呈して死亡した.発症牛では,死亡前に血清AST及びγ-GTPの上昇が認められ,軽度の肝障害が示唆された.死亡牛では,肉眼的に肺の退縮不全,気腫及び水腫,肝臓表面の出血斑が認められた.組織学的に肺胞腔内へのマクロファージ及び好中球の著しい浸潤,Ⅱ型肺胞上皮細胞の増殖,間質性肺気腫及び限局的な肝細胞壊死が認められた.給与サツマイモではカビの発生や黒変などが認められており,傷害を受けていた.これらのサツマイモからはFusarium 属真菌が分離され,また高性能薄層クロマトグラフィーによりイポメアマロンが検出された.以上から,これら症例を傷害サツマイモ中毒と診断した.
水晶体亜脱臼を伴う犬の続発性緑内障眼に対して,網膜凝固用のグリーンレーザーを用いて,前眼房を通して虹彩と脱臼した水晶体の間隙から毛様体を目視しながらレーザー毛様体凝固を実施した.レーザー照射前の3カ月間は眼圧は30~38mmHgを推移した.照射後の3カ月間は15~21mmHgを推移し,その後ふたたび眼圧上昇を認めた.レーザー照射後には明らかなぶどう膜炎の症状は認めなかった.本手技は水晶体と虹彩との間隙から毛様体を観察できる特殊な症例に限定されるが,経強膜毛様体光凝固術(TSCP)ほど周辺組織に損傷を与えずに,また内視鏡下レーザー毛様体凝固術(ECP)のように眼内操作を必要とせずに,毛様体凝固と眼圧降下が可能であることを確認した.
食中毒原因菌Escherichia albertii の豚での保菌状況と分離株の特徴を明らかにするため,2017年及び2018年に山形県内のと畜場搬入豚の保菌調査を行った.525検体の盲腸便を調査し,17検体(3.2%)から37株を分離した.このうち,20分離株(54.1%)がテトラサイクリン等の何らかの抗菌薬に耐性を示した.また,パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法では,37分離株は6グループに分類された.各グループを代表する6菌株は,ゲノムワイド系統解析により既知の5つの系統群の中のG1群及びG3群(2亜系統群)に分類された.当該3群は,いずれも人由来株を含んだ.本研究により,山形県と近隣県の豚は多様なPFGE型を示すE. albertii を保菌することが判明し,豚の生産物が本菌の人への感染源となり得ることが示唆された.