牛白血病ウイルス(BLV)感染牛の早期摘発には,非感染牛の定期的なBLV検査が重要であるが,頻回採血に要する労力や牛に与えるストレスが問題となっている.そこで,採材が容易な乳汁を検体とする抗体検査法として,乳汁エライザ法の確立を試みた.検査には市販の血清エライザキットを用い,その操作手順に従い常乳の乳清を検体として条件検討を行った.その結果,本乳汁エライザ法では,採材時間や分娩後日数等の差によらず乳清原液から抗BLV抗体を検出可能であり,判定には血清エライザ法のしきい値を適用可能であることが示された.また,個体乳の陽性率が46.2~77.8%の農場7戸のバルク乳を本法により検査した結果,全検体が陽性であった.本法の活用により,定期的なBLV検査の実施が容易となり,BLVのまん延防止に貢献するものと考えられる.
黒毛和種子牛に対する生菌製剤の経口投与が糞便中の乳酸,酪酸及び免疫グロブリン(Ig)A濃度に及ぼす影響について検討した.8日齢の黒毛和種子牛40頭をランダムに2群(投与群20頭,対照群20頭)に分け,投与群に対しては14日間,Streptococcous faecalis,Clostridium butyricum 及びBacillus mesenteries を混合した生菌製剤を1日当たり30g投与した.一方,対照群には生菌製剤の投与を行わなかった.投与群の糞便中の酪酸濃度及びIgA濃度は,生菌製剤投与開始後7及び14日で,対照群と比較し有意に高値であった(P<0.05).このことから,黒毛和種子牛に対する生菌製剤の投与は腸管内での酪酸濃度を上昇させ,IgA産生を促進する可能性が示唆された.
唾石症は犬ではまれに発生する病態であるが,導管部を閉塞することは非常にまれである.13歳齢のパピヨンが右頰部の腫脹と口腔内からの膿汁排出を主訴に紹介来院した.針生検では,炎症細胞主体の粘稠度の高い膿汁が採取された.コンピュータ断層撮影(computed tomography : CT)検査で右耳下腺内の囊胞状病変及び口腔との境界部に不定形のX線不透過物を認めた.以上の所見より,唾液腺導管開口部の唾石塞栓による耳下腺導管の拡張と判断し,耳下腺を温存して導管開口部を切開拡張することにより唾石を摘出した.治療後の予後は良好であった.本症例の経過から唾石閉塞の症例では唾液腺囊胞とは異なり唾液腺の摘出は必ずしも必須ではなく,その解除のみでも有効な手段となりうることが示唆された.