ディアギュラウイルス(D'Aguilar virus:DAGV)は牛異常産への関与が疑われる節足動物媒介性ウイルスで,国内における感染の確認は九州・沖縄地方が中心である.今回,2005~2018年に京都府で実施されたアルボウイルスサーベイランスにより,未越夏おとり牛498頭から採材した血清を用いて中和試験による抗体検査を実施したところ,2013,2017及び2018年に採材した17頭で抗体陽性であった.さらに,2017及び2018年に抗体陽性だった10頭の血液からDAGV特異遺伝子が検出され,2017年の4頭の血液からはDAGVを分離,九州・沖縄地方以外で初めてDAGVの侵入を確認した.
腺疫は腺疫菌の感染によって起こるウマ科動物特有の感染症で,世界中で発生がみられている.2019~2020年に輸入された肥育用馬1,303頭の腺疫菌の保有状況調査を実施したところ,フランス産の無症状馬11頭からrPCRにより腺疫菌の遺伝子が検出され,そのうち3頭から腺疫菌を分離した.この3株に,2018~2019年にカナダ産肥育用馬及びベルギー産乗用馬の腺疫発症馬から分離された4株を加えた計7株のSeM遺伝子領域のDNA解析を実施したところ,フランス由来2株が新たなSeM型(SeM-200)に型別された.また分子系統樹解析の結果,フランス由来の3株とベルギー由来の1株で,カナダ由来株とは異なるクラスターが形成された.本研究の結果,輸入肥育用馬の中に腺疫の無症状保菌馬が存在することが分かった.
5歳7カ月齢,雌のフレンチブルドッグに,画像検査にて偶発的な右副腎腫瘤を認めた.腫瘤の大きさは20mmを超えており,後大静脈内に腫瘍栓様の構造物を認めた.内分泌学的検査と2回行った造影CT検査にて良性腫瘍と考えられたが,後大静脈内に腫瘤を認めたため,その腫瘤に起因する合併症のリスクを想定し,外科切除を行った.標出した組織における病理組織学的検査では,副腎腫瘤はリンパ球性副腎髄質炎,後大静脈内腫瘤は血栓で,いずれにおいても腫瘍性変化は認められなかった.術後,小さな血栓を後大静脈内に認めるものの,症例は無症状で良好に経過していたが,第290病日に他疾患で斃死した.
腸原性囊胞に罹患した47~65日齢の肉用出荷鶏11例を病理学的に検索した.全囊胞が単房性で脾臓に密着していた.9例が単一,他2例が各2囊胞を有していた.囊胞は長径が15~68mmで,内腔に淡明粘液を満たしていた.組織学的に,囊胞壁は被覆上皮,上皮下結合組織,平滑筋及び線維性被膜の4層により構成され,被覆上皮は単層の立方または円柱上皮より成り,しばしば絨毛状突起を形成していた.同突起を被う円柱上皮細胞は,遊離側に過ヨウ素酸シッフ及びアルシアンブルーpH2.5の両染色で陽性並びにアザン染色で青染する粘液顆粒を満たしていた.得られた成績から各囊胞が腸に類似する粘膜により内張りされていることが示唆された.1例の囊胞上皮に巣状の重層扁平化生,各2例の囊胞に出血または化膿性炎が観察された.
食肉処理場におけるHACCPプランの科学的根拠を得るために,冷蔵中の枝肉表面温度変化の統計モデル作成が行われているが,区間推定まで行った研究は少ない.本論文の目的は,冷蔵された牛枝肉表面温度の経時的温度測定データをもとに統計学的モデルを作成し,複数の方法による区間推定の結果を比較することである.53頭の牛枝肉の冷蔵庫内における表面温度変化のデータから最小二乗法によってパラメータを推定した.次に,テイラー展開の一次近似式を用いる方法,フィッシャー情報量の逆行列を用いる方法,パラメトリックブートストラップ法及びジャックナイフ法の4種類の方法によってパラメータの信頼区間,枝肉表面温度の信頼区間及び予測区間を計算した.各区間の値には,顕著な差異は認められず,いずれも枝肉表面温度の区間推定に使用可能であると考えられた.