牛趾皮膚炎(DD)は再発を繰り返しやすく発生制御が難しい.本研究では北海道のフリーストール(FS)酪農場のホルスタイン種成乳牛126頭504肢を対象に定期削蹄記録からDDをMステージ分類し,DD発生状況の把握と発生予防対策を講じた.DD活動性病変(aDD)の有病割合を明らかにし目的変数を各Mステージ分類,説明変数を観察場所,産次数に加え2019年2月までの過去3回の削蹄に立会い記録した.結果,aDDの有病頭数は24.6%で初産牛を中心に構成されたFS牛群でaDDの高いオッズ比とaDD再発が示唆された.削蹄情報をMステージ分類により記録し解析した本研究は,牛群管理に有用な情報を提供し国内初の報告と考えられた.
ウサギ飼養施設において,1週間で10羽が相次いで斃死した.うち1羽の病性鑑定の結果,壊死性出血性気管支肺炎が認められ,肺からPasteurella multocida が分離された.分離株の莢膜型推定PCRにおいてA型及びF型の両方の特異増幅産物を認めたため,莢膜合成関連遺伝子群の塩基配列解析を実施したところ,A型及びF型を識別する各プライマー設計部位の配列が両方保存されていた.一方,本菌は間接赤血球凝集反応による莢膜型別では型別不能であった.Multilocus sequence typingを用いた遺伝子型別では,本菌はSequence Type(ST)4に型別された.ST4と遺伝的に近縁な10個のSTで構成されるClonal complex 171に型別される株がウサギから分離された報告は過去にない.
4年間の糖尿病及び皮膚脆弱症候群の既往歴を持つ14歳齢,不妊済の日本猫が突然の食欲・元気の消失を主訴に来院した.対症療法を行ったが,初診から1カ月後に猫は死亡し,病理解剖を行った.解剖時,皮膚の萎縮に加え,体幹部の皮下脂肪組織に多数の乳白色結節を認めた.また膵臓と右副腎に腫瘤を認めた.病理組織検査において,皮膚では化膿性肉芽腫性脂肪織炎及び表皮の菲薄化,真皮の疎な膠原線維及び毛包・皮脂腺の萎縮による萎縮性皮膚症を認めた.膵臓と副腎では膵腺癌と副腎皮質腺腫を認めた.本例では,化膿性肉芽腫性脂肪織炎と萎縮性皮膚症がそれぞれ,膵腺癌と副腎皮質腺腫と関与していることが疑われた.
10歳齢の避妊済雌猫が頭部の部分痙攣発作を主訴に来院した.低血糖がみられ,腹部超音波検査において膵体部に低エコー性の結節が認められたことから,インスリノーマを疑い,プレドニゾロンによる内科療法を試みたところ,一般臨床状態は改善した.その後32カ月間プレドニゾロン内服単独で血糖値管理が可能であったが,全身状態が徐々に悪化して斃死した.剖検と全身諸臓器の病理組織検査及び免疫組織化学的検索により,肝転移を伴う膵体原発の膵島細胞癌(悪性インスリノーマ)と診断した.腫瘍細胞の増殖が緩徐であったことが長期間の生存を可能にしたと考えられた.
2017年8~10月に静岡県内食鳥処理場に搬入された肉用鶏及び産卵鶏の盲腸内容物,計150検体についてサルモネラ属菌の有無及び薬剤耐性を調査し,58検体から96株分離した.同一検体由来の同一血清型の株はパルスフィールドゲル電気泳動法に基づき同一と判断したので,1検体1株のみとし,60株について12剤の薬剤感受性試験を実施した.肉用鶏由来株57株のすべてが2剤以上耐性であり,耐性薬剤はテトラサイクリン,ナリジクス酸,ストレプトマイシン及びカナマイシン(KM)のいずれかであり,産卵鶏由来株3株はすべての薬剤に耐性を示さなかった.また,S. Schwarzengrundを中心とするKM耐性の30株についてKM耐性関連遺伝子を確認したところ,すべての株でaphA1-Iab 及びaac (6' )-Iaa を保有していた.