日本獣医師会雑誌
Online ISSN : 2186-0211
Print ISSN : 0446-6454
ISSN-L : 0446-6454
75 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 井上 恭彰, 矢口 弘美, 平松 美裕子, 和田 好洋
    原稿種別: 短報
    2022 年 75 巻 4 号 p. e51-e55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    正常分娩で生まれた黒毛和種子牛が,出生直後から,起立不能と食欲廃絶を呈し生後2日で死亡した.剖検では,臍帯に明らかな異常はみられなかったが,病理組織学的検査で臍帯炎がみられ,大脳から延髄にかけて髄膜炎がみられた.一方,細菌学的検査は臍帯について未実施であったが,心臓,肺,肝臓,脾臓,腎臓及び大脳から腸管外病原性大腸菌(Extraintestinal pathogenic Escherichia coli:ExPEC)が分離された.大脳及び肺から分離された大腸菌を用い,O-genotyping PCRを実施した結果,Og15遺伝子が陽性となり,免疫組織化学的検査では大脳から延髄及び臍帯の病変に一致して大腸菌O15抗原が検出された.以上より,本症例を,臍帯炎を伴ったExPECによる化膿性髄膜炎と診断した.新生子牛で髄膜炎を疑う場合,臨床的に臍帯に異常がみられなくても,臍帯部の検査が必要であると考えられた.

  • 小松 徹也, 髙村 祐士, 稲葉 七巳, 渡戸 英里, 杉江 建之介, 山本 陽子
    原稿種別: 短報
    2022 年 75 巻 4 号 p. e56-e61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    愛知県内の1養豚場で,2018年3月より豚抗酸菌症による消化管廃棄率が上昇したため,腸間膜リンパ節と農場の環境材料を採取し,病理及び細菌検査を行った.その結果4頭のリンパ節に乾酪壊死が観察され,同部位から抗酸菌が分離された.単離された4株は同じ分子遺伝学的特徴を持ち,Mycobacterium avium 特異的PCR陽性,IS1245 及びIS901 陰性で,hsp65 遺伝子の配列比較からM. avium subsp. hominissuis(MAH)と同定された.本菌は既報と異なるhsp65 及びrpoB 遺伝子の配列を有していた.環境材料から同様の特徴を持つ菌は分離されなかった.豚での分布やヒト由来株との関連を調べるうえで,本分離株は既報と異なる分子遺伝学的特徴を持つ点で貴重である.

小動物臨床関連部門
  • 山田 恭嗣, 黒田 雄大, 山本 つかさ, 西尾 悠誠, 山田 チズ子, 小林 満利子, 森嶋 康之, 前田 健
    原稿種別: 原著
    2022 年 75 巻 4 号 p. e62-e68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    12歳の室内飼育猫が,くしゃみ,膿性鼻汁及び咳などの呼吸器症状を呈していたため,発症5日目に口腔スワブを採取し,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の遺伝子検査を実施した.その結果,SARS-CoV-2遺伝子が検出された.発症8日目に症状が悪化したため,当院にて一般身体検査,血液検査,胸部X線検査及び治療を行った.飼い猫には軽度の気管支炎と血清アミロイドA(SAA)の増加が認められたが,肺炎には至っていなかった.また,口腔内,鼻腔内及び肛門内のスワブを採取し,得られたサンプルの全ゲノム解析を行った結果,SARS-CoV-2デルタ株に感染していたことが明らかになった.その後猫は回復し,回復後の血清に有意なSARS-CoV-2中和抗体価の上昇が観察された.本症例は,SARS-CoV-2感染により呼吸器症状を呈した国内最初の動物の報告である.

  • 小川 ひとみ, 大石 雅彦, 小川 高
    原稿種別: 短報
    2022 年 75 巻 4 号 p. e69-e74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    重度の呼吸困難で来院した気管内腫瘍の猫2例に対して,緊急処置として気管チューブ挿入による気道狭窄解除と腫瘍減量を実施した.胸部X線検査後,全身麻酔下で気管チューブを用いて気管内腫瘍病変による気道閉塞部位を破壊して腫瘍体積を減量し,破壊組織片を採取除去して気道開存を確保した.続いて,再挿管した気管チューブのカフを腫瘍破壊部で膨らませて10分間留置して止血した.抜管後には,麻酔覚醒直後より呼吸状態が顕著に改善された.処置後には,腫瘍減量部の癒着防止の目的でステロイドを投与した.各症例において採取した組織片は,それぞれ腺癌並びに悪性上皮性腫瘍と病理組織診断された.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
feedback
Top