牛胎児血清(FBS)において,牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の迷入は大きな課題である.2017~2021年にかけて収集したFBS 41検体についてBVDVの迷入状況を調査した結果,ペスチウイルス特異的RT-PCRの陽性検体は34検体(82.9%),BVDV特異的抗体の陽性検体数は,BVDV1及びBVDV2に対する中和試験でそれぞれ17検体(41.5%)と1検体(2.4%)であった.RT-PCR陽性かつ市販のBVDV抗原ELISAで高値を示した10検体についてBVDV分離を試みたところ,感染性を持つウイルスは検出されなかった.BVDV遺伝子及びBVDV中和抗体陰性のFBSは5検体(12.2%)のみであった.したがって,FBSの利用においてはBVDVに由来するリスクがあることに留意する必要がある.
国内の豚のブルセラ症の抗体検査は,2022年度から試験管凝集反応試験及び補体結合反応試験により実施されている.しかし,国内では両試験の実施実績が少なく,結果判定の妨げとなる非特異反応や抗補体作用に関する情報がなかった.本試験では,これらの情報を得るため,家畜改良増殖法に基づく豚の種畜検査の余剰血清を用いて両試験を実施した.試験管凝集反応試験では,32/109(29.4%)の血清で非特異反応と考えられる凝集が認められ,そのうち2血清が疑反応と判定された(特異度98.2%).補体結合反応試験では8/92(8.7%)の血清で抗補体作用と考えられる溶血阻止が認められ,そのうち5血清が陰性でないと判定された(特異度94.6%).今回の試験結果は,今後国内で両試験によりブルセラ症の抗体検査を実施していくうえで参考となる.
犬のアレルギー性皮膚炎は継続的な治療を必要とする慢性疾患であり,飼い主の治療参加が必須となる.本研究ではアレルギー性皮膚炎の犬の飼い主を対象としたWEBアンケートを行い,飼い主の治療満足度と関連する因子を検討した.544件の有効回答を解析した結果,17項目が高い治療満足度と有意な関連を示した.これらの項目には,臨床症状の改善に関連した項目の他,飼い主が治療に用いる時間的負担の軽減や高い世帯年収が含まれていた.この結果から,減感作療法などの時間的負担が大きい治療を実施する際には丁寧なインフォームが必要であると考えられる.また,世帯年収と治療満足度の間に関連が認められたことから,今後より幅広い飼い主を対象として,飼い主の社会的立場などの因子と治療満足度との関連を検討する必要があると考えられた.
腺胃重複囊胞に罹患した46~67日齢の肉用鶏5例を病理学的に検索した.剖検により,単一の囊胞が全例の腺胃に密着していた.囊胞は直径35~72mm,単房性及び非交通性であり,内腔に粘液を満たしていた.組織学的に,囊胞壁は内張り上皮,固有層,3層の平滑筋及び被膜により構成され,2例の固有層の深層に複合管状腺が散在した.内張り上皮は単層の円柱または立方上皮より成り,しばしば絨毛状突起を形成していた.同突起を被う円柱上皮細胞は過ヨウ素酸シッフ及びアルシアンブルーpH2.5染色で陽性,アザン染色で青染する粘液顆粒を満たしていた.得られた成績から3囊胞は腸及び2囊胞は腺胃に類似する各粘膜による内張りが示唆された.本例は鶏の腺胃重複囊胞の初報告である.