2020年に石川県の2農場で下痢症を呈した子牛が相次いで死亡した.種々の検査及び病理解析の結果,クリプトスポリジウムによる感染が原因である可能性が考えられた.18S rRNA及びActin遺伝子領域を標的としたPCR及びMultiplex-PCRを実施したところ,Cryptosporidium parvum の2つの遺伝子亜型による混合感染であることが分かった.これら2種の遺伝子亜型による混合感染は国内初めての報告である.同農場で飼育されていた他個体の調査では,感染は子牛に限られ,さらにC. bovis 及びC. ryanae が検出された.飼育環境の調査では子牛を飼育していた床の敷料のみから本原虫が検出され,汚染エリアを熱湯及び石灰乳の塗布により対策を実施したが,短期的には下痢を発症する頭数が減少し効果がみられたものの,清浄化には至らなかった.
ゼロトレランス検証の有用性を確認するため,獣毛(5),糞便(8),消化管内容物(6),レールダスト(5),フットカッター汚れ(5)が付着した黒毛和種牛枝肉を採材した.獣毛,糞便,消化管内容物間の一般細菌数と腸内細菌科菌群数に有意差がなかった.獣毛-糞便-消化管内容物検体の一般細菌数はレールダスト-フットカッター汚れ検体のそれと比べ高値であった.消化管内容物はFirmicutes 門,獣毛・レールダスト・フットカッター汚れはProteobacteria 門の比率が高く,糞便はFirmicutes 門とProteobacteria 門が高い比率の菌叢であった.付着異物ごとに菌叢の違いが確認された.食肉衛生上,糞便及び消化管内容物だけでなく獣毛が付着したと体表面はトリミングすることが必要であると思われた.
X県動物愛護センターは,不登校児童生徒の「居場所」として「動物介在療法」により子ども達を支援してきた.介入セッションが進むと不登校・引きこもり等の状態にあった子ども達の行動に自発的な変化がみられた.目視で確認できる行動に着目し動物介在療法の効果を評価するため,子ども達の行動を指標として効果量を算出し,シングルケース実験デザインの統計分析による効果指標PND(Percentage of Nonoverlapping Data)の解釈基準を基に評価を行ったところ,対象者27名のうち20名に大きな変化があった.動物と子どもが双方にとって有益な関係にあった場合と動物のために子どもが役立つ作業を行った場合に効果量が高い傾向にあった.