日本獣医師会雑誌
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76 巻, 6 号
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産業動物臨床・家畜衛生関連部門
  • 阿部 竜大, 安藤 達哉
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e130-e134
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル フリー

    乳牛における子宮捻転の病態と母体予後との関係を明らかにするため,乳牛139例の子宮捻転を対象に調査を行った.子宮捻転の病態を産次数,捻転度数及び捻転方向に分類し,各々の母体予後を比較すると同時に,捻転整復方法の違いによる母体の予後との関係も比較した.この結果,未経産牛と比較して経産牛で死亡率が高い傾向が明らかとなり,死亡牛の方が治癒牛と比較して有意に産次数が高かった.さらに捻転度数が360°以上で有意に死亡率は高くなり,捻転方向や整復方法では死亡率に有意差は認められなかった.

  • 白鳥 孝佳
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e135-e140
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    牛ヘルペスウイルス1型(BoHV-1)は牛伝染性鼻気管炎(IBR)の病原体であり,国内では注射及び経鼻の2種類の生ワクチンが用いられている.既報において注射ワクチン株の758-43株にUL49遺伝子の一部欠損,経鼻ワクチン株のRLB106株にUL40遺伝子上の一塩基変異が報告されており,この2種類のワクチン株と野外株を一度に識別する方法として,これらの変異部位を含む領域を増幅し制限酵素Sty Ⅰで切断を行うマルチプレックスPCR-RFLP法を構築した.本法は既報の識別PCR法が対応していないRLB106株と共に758-43株も同時に識別可能であった.さらに他のBoHVへの反応は認められず,識別にDNAシーケンスを必要としない本法はBoHV-1株識別及びIBR診断に有用と考えられた.

  • 清水 薫, 岡田 彩加, 猪島 康雄
    原稿種別: 短報
    2023 年 76 巻 6 号 p. e149-e156
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    牛舎におけるハエ類(イエバエとサシバエ)成虫対策のため,2種の薬剤と3種の資材について駆除効果と特徴を比較した.また,ハエ類成虫によるウイルス感染症の拡散リスクを明らかにするため,イエバエによるパラポックスウイルス(PPV)の機械的伝播の可能性と,サシバエにおける牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の体内保有状況について検討した.薬剤と資材は,それぞれ一方のハエのみに選択的に効果があり,組み合わせた使用や,設置後の定期的な管理が必要であった.また,イエバエ体表の直接及び間接洗浄液からPPV遺伝子が検出され,BLV感染牛の牛舎で捕獲したサシバエからはBLV遺伝子が検出された.以上より,感染症の拡散と蔓延防止のためには,発生しているハエ類を識別し,発生動向を把握したうえで,ハエ類に適した駆除方法の選択と設置後の管理が必要であると考えられた.

  • 臼井 優, 秋吉 珠早, 大橋 さやか, 加藤 敏英
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e170-e176
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    乳房炎の治療は,おもに抗菌薬投与により行われるが,抗菌薬選択のため,簡易に分離/同定,薬剤感受性を明らかにすることが必要である.そこで,コロニーの色を含む性状を基に原因菌の推定ができるCHROMagarTM Mastitis培地の性能を評価した.さらに,ペニシリン含有培地を用いたペニシリン感受性及び同じ培地に抗菌薬含有ディスクを置くことによる薬剤感受性の推定を実施することの有用性を評価した.乳房炎乳汁135サンプルを集め試験に供した.結果,乳房炎の主要な原因菌(大腸菌,クレブシエラ属菌,黄色ブドウ球菌,Streptococcus uberis)をそれぞれ100,100,87,42%の一致率で判定し,抗菌薬に対する感受性も推定することができた.この方法により,抗菌薬の適切な選択を促進することが期待される.

小動物臨床関連部門
  • 才田 祐人, 北野 寿, 矢田 乃路子, 矢田 新平
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e141-e148
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

    胸部X線検査において椎体長により指標化された評価法が一般的に知られている.そこで本研究では,僧帽弁粘液腫様変性犬において左心房サイズを椎体長に依存しない方法により評価することの有用性について検討した.左心房サイズ(Left atrial size:LAS)は,臨床ステージとともに有意に上昇し,椎骨左心房径と同等に心臓超音波検査所見と強い相関性を示した.したがって,胸部X線検査におけるLASは,従来法と比較し測定がより簡便であり,体重1kg以上3kg未満,3kg以上5kg未満及び5kg以上10kg未満の個体においてカットオフ値をそれぞれ2.3,3.0及び3.3cmに設定することで,心臓超音波検査における左心房及び左心室拡張の目安になりうると考えられた.

  • 村上 麻実, 原田 和記, 浅井 鉄夫
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e164-e169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    医療上きわめて重要な抗菌薬(CIA)は慎重な使用が必要であるが,愛玩動物における使用実態は未だ不明な点が多い.そこで,2022年4~6月に岐阜県内動物病院の犬猫に対して使用された主要CIAの剤型,成分及び対象疾患を調査した.主要CIAは調査期間内の1,209症例で使用され,内訳はフルオロキノロン(FQ)系薬734症例,第3世代セファロスポリン(CEP)系薬467症例,カルバペネム系薬8症例であった.FQ系薬と第3世代CEP系薬の両者ともに犬よりも猫で有意に注射剤の使用割合が高かった.この2剤は動物種に関わらず皮膚/耳疾患に多く使用される傾向にあったが,その他疾患への使用状況は動物種により異なった.以上から,愛玩動物におけるCIAの慎重使用を推進するには,動物種,剤型及び好発疾患の特徴に応じた対策が必要である.

  • 岡野 公禎, 河内 由紀, 上原 ひかり, 田近 萌
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e177-e182
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー

    卵巣子宮摘出術の術前にモルヒネを皮下投与した供試犬60頭を,マロピタントを経口投与した2群(MP2群:n=15,2mg/kg;MP8群:n=15,8mg/kg),皮下投与群(MS1群:n=15,1mg/kg)及び生理食塩水を皮下投与した対照群(Control群:n=15,0.1ml/kg)の4群に分類した.悪心や嘔吐を麻酔導入前と抜管後で,PONV(postoperative nausea and vomiting)スコアを抜管後で評価した.導入前の嘔吐はMP2群,MP8群,MS1群で,悪心はMP8群で有意に減少した(P<0.05).抜管後は,MP8群が有意な悪心抑制とPONVスコアの改善を示した(P<0.05).マロピタントの経口投与はモルヒネによる嘔吐に対し皮下投与と同様な制吐作用を有し,8mg/kgの経口投与では悪心及びPONVに対し十分な抑制効果を示した.

獣医公衆衛生・野生動物・環境保全関連部門
  • 須田 朋洋, 今野 貴之, 福田 有希, 佐藤 唱
    原稿種別: 原著
    2023 年 76 巻 6 号 p. e157-e163
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    豚におけるEscherichia albertii 浸潤状況を明らかにするため,秋田県のと畜場搬入豚及びその飼育農場環境における検出状況を調査した.Nested-PCRによるスクリーニング試験の結果,豚直腸便のE. albertii 陽性率は21.9%で,保菌率の高かった農場では環境試料からも検出された.菌株分離を行い,豚直腸便5検体と農場内の敷料(バイオベッド)5検体から菌株を得た.分離株はいずれも病原遺伝子としてeaepaaEacdt を保有し,O抗原遺伝子型がEAOg25で,一部を除きパルスフィールドゲル電気泳動によるPFGEパターンも類似していた.これらの結果より,秋田県の豚でもE. albertii は比較的高率に保菌され,一部の農場内では特定のE. albertii が飼育環境を汚染していたことが示された.

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