福井県の1酪農場で牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)感染による集団下痢が発生し,子牛1頭が持続感染(PI)牛として摘発された.PI牛を産出した母牛の移動歴を調査した結果,妊娠100日前後に県内公共牧場で飼養されており,そこでBVDVに感染したと推察された.疫学調査の結果,BVDVの公共牧場への侵入経路の特定には至らなかった.牛ウイルス性下痢発症牛及びPI牛から検出されたウイルスの5′非翻訳領域及びE2領域について遺伝子解析した結果,BVDV2aに近縁で,塩基配列は100%一致した.E2領域の分子系統樹解析の結果,本症例の原因ウイルスはアメリカの分離株に近縁で,既報の国内分離株とは異なるクラスターを形成した.これまでこのクラスターに分類される国内株の報告事例はなく,本症例は当該クラスターに分類されるBVDVによる初の症例報告である.
食鳥検査時に慢性うっ血脾と診断された45~52日齢の肉用鶏12例の脾臓を病理学的に検索した.全例の脾臓が重量で23~114 gに腫大し,褪色及び硬化を伴っていた.膨隆した割面上,被膜が肥厚し,暗赤色の脾髄に淡黄色組織が樹枝状または塊状に増生していた.病理組織学的に,脾臓の被膜及び脾柱が線維芽細胞及び膠原線維の増生により肥厚し,白脾髄を構成するリンパ球が減数し,赤脾髄が赤血球を満たして拡張していた.3例の赤脾髄に褐色顆粒を貪食したマクロファージが増数していた.3例の脾静脈の脾臓内分枝に器質化血栓及び2例の同分枝に慢性炎症または亜急性炎症がそれぞれ観察された.得られた成績から,観察された静脈病変が鶏の慢性うっ血脾の一要因として関与していたことが示唆された.