ヨーネ菌に対する感受性は若齢ほど高いとされているが,成牛への感染リスクも報告されている.本研究では,子牛と成牛の初感染時,さらに成牛の再感染時における感染初期(6カ月間)の排菌及び免疫応答の推移を解析した.成牛(2歳3カ月齢)初感染群の2頭は,子牛の初感染時と同様に菌接種後3カ月程度で細胞性免疫の応答が確認され,月齢に関係なくヨーネ菌に感染することが示された.しかし,感染初期の排菌は子牛に比べて散発的で,臓器での菌増殖及び病変形成は限定的であり,月齢による抵抗性の違いが示唆された.さらに,成牛再感染群として,生後1週齢でヨーネ菌を接種し,潜伏感染のまま経過していた2頭に2歳3カ月齢でヨーネ菌を再接種した.再感染群の臓器から菌分離はされず,子牛期に誘起された獲得免疫により,再感染に対して抵抗性を示すと考えられた.
抗菌剤の使用量を削減するためには,抗菌剤による治療実態の把握が重要である.2016~2020年度までの5年間の岐阜県内の牛における抗菌剤による治療回数とその対象疾病を,岐阜県農業共済組合が保有する電子カルテデータを活用して調査した.年ごとの総治療回数は23,180~25,580回で,5年間の総数は119,191回であった.治療回数全体では,呼吸器疾病が58.6%,消化器疾病が22.2%を占めたが,5年間に消化器疾病の占める割合が増加した.肉用牛は県内牛飼養頭数の85.4%を占め,治療回数では呼吸器疾病が96.2%,消化器疾病が92.7%を占めた.また,呼吸器疾病に対しフェニコール系抗菌剤(38.9%)が,消化器疾病に対しサルファ剤系抗菌剤(34.8%)が最も多く使用された.本調査から,岐阜県内で使用される抗菌剤の種類や治療目的が明らかとなり,抗菌剤使用低減のためには呼吸器・消化器疾病対策が重要である.
本研究の目的は,牛の末梢血単核球への1α,25-dihydroxyvitamin D3(活性型ビタミンD3)添加の影響を明らかにすることであった.健康な20頭の黒毛和種子牛より末梢血単核球(PBMC)を分離した.それぞれ得られたPBMCに対して無刺激あるいはpolyinosinic-polycytidylic acid(poly I:C)刺激し,活性型ビタミンD3を添加した群(ビタミンD群),添加しなかった群(対照群)にて培養した.その結果,培養上清中の腫瘍壊死因子αの濃度は,poly I:C刺激下において,ビタミンD群では対照群と比較し有意に低値であった(P<0.05).また,培養後の細胞生存率は,poly I:C刺激下において,ビタミンD群では対照群と比較し,有意に高値であった(P<0.01).これらのことから,牛のPBMCへの活性型ビタミンDの添加は,poly I:C刺激下において抗炎症作用並びに細胞生存率に影響を及ぼすことが伺えた.
十二指腸の線毛性前腸性囊胞(CFC)に罹患した48日齢の肉用鶏1例を病理学的に検索した.長径70 mmの楕円球状囊胞が十二指腸の下行部近位及び上行部遠位に密着して同臓器を圧迫していた.囊胞は単房性で,内腔に淡黄色粘液を満たしていた.囊胞の漿膜が肥厚し,黄褐色乾酪化巣の散在を伴っていた.組織学的に,囊胞壁は内張り上皮,上皮下結合組織,平滑筋及び線維性被膜により構成され,内張り上皮は杯細胞及び粘液腺の散在を伴う偽重層線毛円柱上皮であった.得られた成績から,十二指腸のCFCと診断した.併発病変として囊胞の慢性化膿性漿膜炎及び異所性膵並びに囊胞に近接する小静脈の線維素性血栓が観察され,囊胞の解剖学的位置と漿膜炎並びに囊胞の大きさと血栓の関連が推測された.本例は鶏における十二指腸のCFCの初報告である.