3カ月齢のホルスタイン種子牛が後躯麻痺,起立困難を呈した.右側背部に波動感のある腫脹部位がみられ,超音波検査及びX線検査で第8胸椎膿瘍と推察された.病理解剖では,当該部位に被包化膿瘍が形成され,第8胸椎棘突起及び椎弓は顕著に融解穿孔し,脊柱管内では変形した椎骨が背側硬膜外から脊髄を圧迫していた.その他に,肝左葉及び舌根部に膿瘍が認められた.細菌検査では,前述の膿瘍全てからFusobacterium necrophorum subsp. necrophorum が分離され,抗F. necrophorum 抗体を用いた免疫組織化学では膿瘍部のグラム陰性桿菌に一致して陽性であった.本症例は,出生後に臍帯から侵入した本菌が肝膿瘍を形成後,血行性に胸椎に移行した可能性が示唆された.
腺胃の線毛性前腸性囊胞(CFC)に罹患した44日齢の肉用鶏1例に遭遇した.長径64 mmの楕円球状囊胞が腺胃及び遠位食道の背側に密着していたが,前者に優勢に密着していた.囊胞は単房性で,ほぼ平滑な内面を有し,内腔に淡明粘液を満たしていた.病理組織学的に,囊胞壁は内張り上皮,上皮下結合組織,平滑筋層及び線維性被膜により構成され,内張り上皮は杯細胞の散在を伴う偽重層線毛円柱上皮並びに線毛を欠く単層上皮よりなり,平滑筋層間に複合管状腺が存在した.線毛を欠く内張り上皮及び複合管状腺の由来として腺胃粘膜が示唆された.すなわち,囊胞を内張りする偽重層線毛円柱上皮及び腺胃粘膜の共通起源は気管支,食道及び腺胃の原基が発生する前腸であり,同囊胞はCFCと診断された.本例は鶏にみられた腺胃のCFCの初報告である.