酪農場でSalmonella Dublinによるサルモネラ症が発生し,感染拡大防止のため増菌培養液からの遺伝子検査法を導入した.検出性能を評価するため,DNA抽出法として熱抽出,自動核酸抽出機,抽出キットを比較したところ,血液培養液では自動核酸抽出機と抽出キット,糞便培養液では熱抽出と自動核酸抽出機で最も高い検出感度を示した.結果は採材後1~2日で判明し,迅速な対応が可能であった.子牛の個体検査及び子牛エリアの環境検査では陽性を認めたが,成牛エリアの環境検査は陰性であった.陽性牛には薬剤感受性試験に基づき抗菌薬を投与し,環境検査で陽性であった場所には清掃・消毒を指導し,モニタリングを継続した.以降は陰性化が確認され,対策開始から5カ月後に清浄化を達成した.本法は分離培養法より高感度かつ迅速であり,農場防疫対策の早期実施を可能にする有用な検査法である.
各1例の筋胃,回腸,食道及び十二指腸並びに4例の腺胃に密着した肉用鶏8例の消化管重複囊胞(本症)を検索した.剖検により7例の囊胞が各消化管の背側に位置していた.組織学的に,各囊胞の内張り上皮が形成する絨毛状突起の背丈の径,固有層の腺様組織数及び平滑筋層の厚さを測定した.筋胃重複囊胞は背丈の高い絨毛状突起及び多数の腺様組織を有し,内腔に層紋状に配列する好酸性物質を含んだ.回腸重複囊胞の絨毛状突起の背丈及び腺様組織数はともに中程度であった.両囊胞の平滑筋層はともに中程度に発達していた.得られた成績から,前囊胞は筋胃,後囊胞は腸に類似する粘膜による内張りが示唆された.両囊胞は鶏の初報告である.本症の正確な病理発生は不明であるが,大多数の検索囊胞が消化管の背側に位置した事実から,人例の脊索分離障害説が有力視された.
岩手県の食鳥処理場において,ある銘柄鶏の深胸筋に筋線維の走行に沿った線状白色巣(白線)が認められたため,その発生調査及び病理組織学的検索を行った.白線のある個体はない個体よりも体重が有意に重かった.しかし,体重が平均以下のもので白線が中程度から重度のものも数例認められた.雄は雌よりも発生率が有意に高かった.浅胸筋と深胸筋の白線の程度は弱い正の相関性(r=0.43)があった.ただし浅胸筋の白線がごく軽度から軽度であっても,深胸筋の白線が中程度から重度のものも数例認められた.病理組織学的には,この白線は筋線維束間に増生した脂肪組織であり,正常に比較し多く認められたが,筋線維の変性は白線が重度のものであっても正常と同程度であり,走行の乱れなども認められなかった.これらの結果から,この白線は筋線維の変性を伴わない脂肪沈着であると考えられた.