ラットを用いて感染症の病態生理を研究するとき,とくに抗体蛋白のうちIgMとIgGについて,動態を検索する際は,それぞれが全く混在することなく,簡易迅速に分画し得ることが望ましい.そこで著者らは,カラムクロマトグラフィーを用いる血清蛋白分画法に改良を加え,Multilayermicroc01um11s(8×160mm)中にDEAE-SephadcxA50を用い,塩濃度上昇による8stepwisc,流速18.6ml71時間での分画法を考案した.その結果,ラット血清中のIgGとIgMは,容易かつ完全に分離された.ついで,トキソプラズマRH株またはBcvcr一1ey-Shimizu株1.0×107~1.5×107個を,成熟WistarJmamichi雌ラットの腹腔内に接種し,血清蛋白,糖蛋白,脂蛋白の動態と,免疫グロブリンの推移を調べた.そしてまた,トキソプラズマ感染後8週以上を経たラットの胎児と新生子についても,同様に検討を加えた.その結果,血清総蛋白,糖蛋白結合糖質,総コレステロール量の増加,さらにα-グロプリン,α2-グリコプロテイン,γ-グロプリン分画の増加などについて,Iおよび3週目の動態には,著変を認めたが,8週目の変動は一般に軽度であった.一方,免疫グロブリン推移では,感染後5日目にはIgMに,1週目ではIgMと工gG双方に,そしてその後は1gGのみに抗体活性が認められた.胎児および新生子のDyctitcrsでは,ともに一定の抗体価を示し,生後3週目を境にして漸減し,5週目で完全陰性となるものも現われ,8週目では全例陰性となった.新生子の抗体活性は,すべてIgGのみに認められた.今回の実1験における胎児からは,トキソプラズマの分離はできなかった.
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