成熟したウシの耳下腺の腺胞・介在部および線条部について, 光学顕微鏡ならびに透過・走査電子顕微鏡で観察した. 耳下腺の腺腔は広く明瞭で, 腺胞細胞は微酸好性で, PASに弱く反応し, ABに染まらない漿液細胞であった. 電顕的に, 腺胞細胞は明調・暗調細胞, さらに, 細胞小器官の少ない明るい特殊細胞からなり, 前二者の細胞は種々の分泌顆粒を有していた. 腺腔は広く, 細胞間隙ならびに細胞間分泌細管がよく発達し, これらに面する細胞自由面には, よく発達した微絨毛やアポクリン突起がみられた. また, 明調細胞の核上部には, 多くのミトコンドリアが認められたが, 粗面小胞体は短桿状を呈し, その分布は疎であった. 介在部は, 丈の低いPAS陽性で, ABに染まらない立方上皮細胞からなり, 電顕的には, 明調細胞のみからなり, 明らかな分泌顆粒は認められなかった. 線条部は, PAS陽性で, ABに染まらない丈の高い円柱上皮細胞からなり, 明調・暗調細胞と, さらに明るい特殊細胞がみられた. これらの細胞には, いずれにも明らかな分泌顆粒は認められなかった. 管腔面の構造は, さまざまな形状を示し, 大きく2つの型がみられた. 一つは, 短かい微絨毛が比較的少ないものから多数存在するもの, 他は, 前者と形態的に全く異なり, 細胞の項部が膨隆していた. さらに, 線条部の底部には, 酸好性で電子密度の異なる種々の顆粒をもつ特殊基底細胞が認められた。
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