日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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43 巻, 4 号
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  • 山野 秀二
    1981 年 43 巻 4 号 p. 459-465,468
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Barkow(1829)は若鶏には旁排泄腔脈管体は存在していないと報告して以来, 本器管の発生については今日まで不明のままであった. 著者は雄ニワトリ旁排泄腔脈管体の原基形成は孵卵7日胚で, 小さな血管と神経をともなう間葉系細胞の集塊として出現することをみいだした. この旁排泄腔脈管体原基の発生は3つの発達段階に区分することができた. すなわち, 第1期(間葉系細胞の集塊の形成期): 孵卵7日胚から8日胚までの期間で, その原基は間葉系細胞の集塊からなっていた. 第II期(リンパ腔の形成期): 孵卵9日胚から12日胚までの期間で, リンパ腔が形成されていた. 第III期(毛細血管索の形成期): 孵卵14日胚以降孵化日までの期間で, 内リンパ腔の発達にともなって毛細血管索の形成が始まっていた. 旁排泄腔脈管体を構成するすべての要素, すなわち, 被膜・柱・毛細血管索・周縁および内リンパ腔は孵卵16日胚頃にすでに完成していた.
  • 芹川 忠夫, 村口 武彦, 山田 淳三, 高田 博
    1981 年 43 巻 4 号 p. 469-480
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    4頭の雄ビーグル犬に3.2×108個のBrucella canisを経口接種した. 接種11~19週後から全頭の尿中に頭部対頭部型の凝集精子を検出し, 同様の凝集精子を2頭の精巣上体管の内液中にも認めた. Shulmanの毛細管法によって血清中に精子凝集活性が検出できた. この活性の継続期間とその力価には個体差が認められた. 精子凝集活性は1頭の精巣と精巣上体の抽出液および精巣上体管の内液にも検出できた. Sephadex G-200を用いたゲル炉過と分離用ゾーン電気泳動による血清および組織液の分画実験によって, 精子凝集活性が免疫グロブリン分画にあることがわかった. この精子凝集活性はB. canis抗原に対する凝集抗体に起因せず, 56℃30分間の加熱処理後もその凝集活性を失わなかった. 以上の成績から, 精子凝集は精子自己抗体によって生じたと推察した. B. canis感染犬に認めた精子凝集は不妊の重要な一原因となると考えられる.
  • 中村 政幸, 吉村 治郎, 小枝 鉄雄, 佐藤 静夫
    1981 年 43 巻 4 号 p. 481-490
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    採卵鶏, ブロイラーの初生ヒナを用い, 餌付前から経時的に約50日齢まで, クロアカから大腸菌を分離して, 耐性大腸菌の動向を調べた. また, ふ卵器の綿毛あるいは餌付前のクロアカから分離された耐性大腸菌の定着性を血清学的にも検討した. なお, 給餌した飼料中には, 耐性大腸菌および抗菌性薬剤は含まれていない. 耐性大腸菌はふ化翌日の餌付前のすべてのヒナから, ほとんど100%の頻度で分離されたので, ふ卵器の綿毛を調べたところ, 分離された大腸菌の多くが, Rプラスミド保有菌を含む耐性菌であった. しかもこれらふ卵器由来大腸菌と餌付前のクロアカ由来大腸菌とは, 同一の血清型, 耐性型を示す場合が多かった. また, これらと同一の血清型を示す耐性大腸菌は, 全実験期間中の分離菌の約半数に認められた. さらに, 餌付前のヒナから分離された耐性大腸菌の耐性型, 血清型は, 由来により異なっていた. その後の加齢に伴う耐性型, 血清型, Rプラスミド保有菌の変動もそれぞれ異なっていた. 耐性大腸菌は観察期間中ほとんど減少しないことが明らかにされた.
  • 谷地田 俊介, 青山 茂美, 高橋 直治, 沢口 和成, 入谷 好一
    1981 年 43 巻 4 号 p. 491-497,500
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    伝染性気管支炎イルウス(IBV), ニユーカツスル病ウイルス(NDV), および伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)の各種の病原性株が培養気管と鶏胎児に及ぼす影響を検討した. 培養気管に対しては強毒およびワクチンIBV, すべてのNDV, そして弱毒ILTVは種々のパーセントのCiliostasisを起こしたが, 非病原性IBVおよび強毒ILTV接種の培養気管では一定したCiliostasisが認められなかった. 鶏胎児に対する致死性では強毒およびワクチンIBVと強毒ILTVが低かった. 次に, これらのウイルスの感染価を各種宿主で比較測定したところ, 本培養気管は, 特にIBV発育卵非順化株のアッセイに価値あるホストであるとの結果が得られた.
  • 大川 隆徳, 久葉 昇
    1981 年 43 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ワーレン種幼雛76羽に孵化後2日齢から9日齢まで, 飼料に3%添加したアンメリンを経口的に投与し, また, 無処理の32羽を対照群として供試した. 距離30cm, 20ジュールの閃光刺激を与えて, 網膜電図およびブルスト視覚誘発電位を同時に記録した. 対照および処理鶏の眼球は実験終了後に組織学的検索を行った. 3%アンメリン投与後の時間的経過に伴う視覚障害の進行から網膜電図の波形の変化は, 7つの段階に分類できた. すなわち, 正常波形像(I期)は90~300μVの範囲のa, bおよびc波から構成される. アンメリン投与後24時間以内に, aおよびc波の振幅は次第に減少する(II期). 投与後30時間で, c波は消失し(III期), b波は48時間で消える(IV期). 一方, 48~72時間に10~50μVの低振幅緩徐な角膜側陽性電位が認められ(VI期), ついで, 投与後96時間で, 視覚性の電位は完全に消失する(VII期). 組織学的所見から, V期ERGを示した網膜は色素上皮層の萎縮および視細外節の配列の乱れが認められ, さらに, VIおよびVII期の網膜では, 視細胞および外類粒層の著しい変性と空砲化が観察された.
  • 佐藤 昭夫, 古賀 俊伸, 井上 誠, 後藤 直彰
    1981 年 43 巻 4 号 p. 509-515,519
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ハクチョウ族およびその他のガンカモ科鳥類88羽中49羽にアミロイド症を認め, 病理学的に検討した. アミロイド症は高齢のものに頻発する傾向がみられたが, 性別および飼育地による発症の頻度の差はなかった. アミロイド沈着は肝・脾・腎・心・甲状腺・副腎および消化管に認められた. 脾では塊状に沈着したアミロイド中に炎症性反応をともなった巣状壊死がみられ, 腎ではアミロイド沈着による糸毬体および尿細管の変性・崩壊が認められた. 甲状腺・副腎では重度の沈着により正常構造をほとんど残さない例がしばしばみられた. 腸炎, 気嚢炎, 腹膜炎, 尿酸塩沈着症おび趾瘤が同時にみられた症例もあったが, アミロイド症との関係は明らかではなかった.
  • 尾形 学, 小谷 均, 輿水 馨, 曲渕 輝夫
    1981 年 43 巻 4 号 p. 521-529
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1973年から1980年にわたり, 3科5属8種におよぶ306頭の外見上健康なサル類, すなわちリスザル9頭, ミドリザル9頭, カニクイザル164頭, アカゲザル10頭, ニホンザル53頭, オランウータン1頭, ゴリラ2頭, チンパージー58頭からウレアプラズマの分離をこころみた. ウレアプラズマは, リスザルの鼻腔, 口腔, ミドリザルの鼻腔, 口腔, 直腸, 包皮, カニクイザルの鼻腔, 口腔, 直腸, 包皮およびチンパンジーの鼻腔から分離されたが, 他のサル類からは分離されなかった. 発育阻止試験および代謝阻止試験により血清学的性状を検討したところ, 供試したサル類由来ウレアプラズマ菌株は抗原的に不均質であり, サル類の動物分類学上の科, すなわちマーモセット科, オマキザル科, オナガザル科およびオランウータン科にそれぞれ対応する4血清群に分けられた. サル類由来株はウシ, ヤギ, ヒツジ, イヌ, ネコ, トリ由来株とは血清学的類似性は認められなかった. しかし, オナガザル科に属する血清群とヒト由来のUreaplasma urealyticum間には共通抗原が存在することが判明した.
  • 薩田 清明, 遠藤 泰寛, 上与那原 寛喜, 保科 仁, 鎌田 知能, 古山 英夫, 市川 洋征, 日高 良一, 新堀 精一, 新島 泰樹, ...
    1981 年 43 巻 4 号 p. 531-538
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1975年7月から1979年9月の間の日本の各地のブタおよびヒトから採取した血清でブタ型インフルエンザウイルスのA/NJ/8/76株に対するHI抗体の動きから, ブタ型ウイルスの流行を調査し, 次のような結果が得られた. 1)ブタの間のブタ型ウイルスの流行に著しい地域差が認められた. 2)ブタにおける流行に季節的変動の存在することが示唆された. 3)屠場関係者の間にブタ型ウイルスによる初感染を強く示唆されるものが約9%に認められた. これらの結果から, 今後も本ウイルスはブタの間で流行が継続していくものと予想される. さらに, 屠場関係者を中心にヒトにおけを動きを血清学的に注目していくことが必要であろう. 謝辞: 各地で心良く採血にご協力いただいた関係各位に感謝致します. 本論文の要旨は, 1978年10月の第47回日本公衆衛生学会総会, 1979年4月, 1980年3月の第87回, 第89回日本獣医学会において発表した.
  • 田村 正明, 奥 恒行, 杉浦 邦紀
    1981 年 43 巻 4 号 p. 539-551
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    泌乳期の乳牛の乳腺におけるCa代謝を解明するために, Sephadex G-100ならびにG-75カラムを用いるゲル濾過法およびDEAE Sephadex A-25イオン交換クロマトグラフィーによって牛乳から2種類のCaBP(mCaBP-3, mCa-BP-4)を分離, 精製し, その物理化学的ならびに免疫学的性質を観察した. また, ウシ小腸粘膜に存在するD依存性CaBPの性状と比較検討した. 精製mcaBP-3ならびにmCaBP-4は, 7.5%ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動においていずれも1本のバンドとして観察され, その易動度は0.73であった. また, 2つの牛乳CaBPはCaの存在下に電気泳動すると, その易動度は陰極側へと大きく変化した. 2つの牛乳CaBPの分子量はゲル濾過法ならびにSDSディスク電気泳動法によって推定したところ, いずれも約15,000であった. 2つの牛乳CaBPのリガンド特異性は, Ca≫SrZnCdMnMgの順であり, Caと特異的に結合することが観察された. さらに, 2つの牛乳CaBPはCaに対して2相性の結合様相を示し, 親和性が強く(Kd&eDot;4×10<-6>M), 結合容量の小さい結合部位(n=1)と, 親和性が弱く(Kd=1.5×10<-4>M)結合容量の大きい結合部位(n=4~5)の2つを持っていた. また, 2つの牛乳CaBPともプロナーゼならびにノィラミニダーゼ処理によってそのCa結合能は約95%消失し, トリプシン処理によっても約70%のCa結合能の消失が観察された. しかしトリプシン処理に先だって1 mMのCaCl2と反応させた場合には, Ca結合能は消失しなかった. 2つの牛乳CaBPとも加熱処理によってそのCa結合能はほとんど影響を受けなかった. 一方, ウサギ抗mCaBP-3抗血清を用いる2重拡散法において, mCaBP-3はmCaBP-4と免疫学的に同一の抗原性を示した. しかし, ウシ小腸粘膜粗CaBPとは免疫学的交差性は観察されなかった. 以上の結果から, 牛乳中にはD依存性CaBPと類似した性質を持つCaBPの存在することが明らかにされた. しかしながら, このものはウシ小腸粘膜CaBPとは異なるものと思われる. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 終始懇篤なる御指導を賜わりました東京大学医学部保健栄養学教室 細谷憲政教授に深謝致します. 本論文の要旨はThe third international symposium on calcium-binding proteins and calcium function in health and disease (Wisconsin Center, 1980), 第90回日本獣医学会(山口, 1980)で報告した.
  • 杉村 誠, 鈴木 義孝, 神谷 新司, 藤田 達男
    1981 年 43 巻 4 号 p. 553-555
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    昭和54年度特別天然記念物ニホンカモシカの保護管理に関する調査研究(文化庁)の一環として, 野生のメスニホンカモシカの性成熟, 妊娠および胎仔の発育を検討し, 約2.5年で性成熟に達するものと推定された. 成メス31例中26例(83.9%)は妊娠しており, 胎仔数はすべて1仔であった. 胎仔体長(CRL)の月別分布から胎仔の発育曲線を得, 図に示した.
  • 平井 克哉, 山下 照夫, 沢 英之, 島倉 省吾, 柵木 利昭, 井上 睦
    1981 年 43 巻 4 号 p. 557-559
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    インドネシア共和国から1群20羽輸入されたオウムが検疫の数日後に某業者において17羽斃死し, ニューカッスル病ウイルスが分離された. これが感染源になって, 同室で飼育されていた約300羽のインコ類(オカメ, サメクサ, キビセイおよびアサギボウシインコ)にニューカッスル病の発生があった. 輸入鳥類の検疫の強化が望まれる.
  • 山下 照夫, 平井 克哉
    1981 年 43 巻 4 号 p. 561-563
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1980年4月から8月の間に, 某輸入業者は諸外国から計1,147羽のオウム類の愛玩鳥を輸入した. 検疫後2週間以内に斃死あるいは病的症状を呈して殺処理した計212羽から, クラミジアが72.6%(154羽)の率で分離された. これらの鳥は保菌状態で輸入され, 環境の変化などで発症したものと考えられた. 輸入愛玩用鳥類については検疫制度の改革ならびに輸入業者, 小鳥店などの行政指導の強化が望まれる.
  • 鎌田 正信, 秋山 綽, 小田 隆範, 福沢 慶一
    1981 年 43 巻 4 号 p. 565-568
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道日高地方の繁殖雌馬に発生する子宮内膜炎の原因学的調査を実施したところ, 144例の子宮頸管スワブから20株のHaemophilus equigenitalisが我国で初めて分離され, 馬伝染性子宮炎の発生が確認された. 分離株とHaemophilus equigenitalis K-188株(米国株)の各種性状は全く一致した. 早急に, 全国的な馬伝染性子宮炎の疫学調査ならびに強力な行政指導が必要であろう.
  • 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅, 今川 浩, 安藤 泰正, 鎌田 正信, 和田 隆一, 秋山 綽
    1981 年 43 巻 4 号 p. 569-572
    発行日: 1981/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    競走馬のゲタウイルス感染症流行時にゲタウイルスとは異なり, RK-13細胞にのみCPEを起こす6株のウイルスが分雑された[6]. 分離ウイルスは50nmのフィルターを通過し, RNA型の核酸を有し, エーテルやクロロホルムに耐性であった. ネガティブ染色による電顕像で直径28-30nmのエンベロープを欠く粒子が認められた. これらの成績はピコルナウイルス群に属すウイルスの性状を示すと考えられた. 更に分離ウイルスは, pH 3.0に耐性な2株と感受性な4株に分けられた. 50℃, 30分の加熱には, いずれの株も感染価の減少をきたしが, pH 3.0に耐性な2株は1MのMgCl2添加によって感染価が保持された. これらのウイルスは, 血清学的にも酸に耐性な群と感受性な群に大別されたが, 互に部分交差した. 耐性な株と感受性な株の代表株をそれぞれ用いて, ウイルスが分離された馬群の馬から集めた血清100例について中和試験を行なった. 前者に対する陽性血清は1:10-1:40の抗体価をピークに93例, 後者では1:5-1:10をピークに63例が検出された. ウイルスが分離された馬の分離時血清中にも抗体が認められたが, 組血清では抗体価の変動はなかった. また1年後, 2頭の馬から同様に抗原的に同一のウイルスが再度分離されたことから, これらのウイルスは馬に持続感染していたもので, ゲタウイルス感染症の流行とは特別な関係はないと考えられた.
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